ペリクレス
プルターク英雄伝、河野与一訳、岩波文庫、1952。
ペリクレス（＝Pericles）は、両親とも良い家柄である。父クサンティッポス
は、ペルシヤ戦争で功を挙げた。母アガリステは、かつて、独裁者ペイシストラ
トスを追い出して、アテナイに民主制を回復させたクレイステネスの姪である。
母は獅子を産む夢を見て、数日後にペリクレスを産んだ。体格、容姿とも申し分
ないが、頭だけが長かった。だから、ペリクレスの彫刻はみな兜を被っている。
アッティカの詩人は、玉葱頭という仇名を付けた。喜劇詩人クラティノスは、雲
を集める者（＝ゼウス）をもじって、「頭を集める者」と呼んだ。また、テレク
レイデスは、ペリクレスが国政に当惑している様を、「頭が重い」と揶揄した。
音楽の教師はダモンで、哲学の教師はゼノンであるが、もっとも影響を与えた
のはアナクサゴラスである。この特徴から、ペリクレスは気位が高く、まげても
笑わず、静かな歩きぶりと、演説の際は感情に乱されぬ上着の着こなしとで知ら
れた。
ある時、下劣な人に一日中悪口を言われながら、市場の真ん中でそれを忍んだ。
夕方、家へ帰ると、その男は罵声を浴びせながらついて来た。家に着くと、ペリ
クレスは召使に灯を持たせ、その男を家まで送らせた。
田舎で、一本角の羊が産まれて、ペリクレスの下に届けられた。予言者ランプ
ロンは、アテナイの二つの勢力、トゥキュディデス（別人）とペリクレスのうち、
ひとつが実権を握ると予言した。アナクサゴラスはその頭を解剖し、脳がない事
を示して、人々を驚嘆させた。しかし、少し後、事態は予言通りにったので、ラ
ンプロンも感嘆された。このような異変は、その仕組みを突き止めるだけでなく、
神々の合図とも取るべきである。
ペリクレスは、若い頃は人前に出るのを恐れた。というのは、容姿、弁舌とも、
独裁者ペイシストラトスに似ていた為である。そこで、陶片追放を恐れて政治に
は近付かず、もっぱら軍隊で活躍した。しかし、アリステイデスは死に、テミス
トクレスは追放され、キモンは外征勝ちで、ペリクレスの擁立が望まれた。ペリ
クレスは出自に反して、貧しい民衆の味方となった。それは、貴族派のキモンに
対抗する為である。
以降、ペリクレスは宴会の誘いも断るようになった。しかし、飽きられるのを
避ける為、民衆の前に姿を現す事も控え目にした。
弁舌、体力を鍛え、軍隊でも功績があったので、オリュンピオスという仇名が
付いた。ペリクレスの演説する様子は、「雷を発するように」と喩えられる所か
ら、これは主に、弁舌に由来するように思われる。
口は達者だったが、演壇に登る時は、余計な言葉を発しないよう神に祈った。
遠征の際、同僚のソフォクレスが一人の美少年を褒めると、「ソフォクレス、
将軍というものは手だけでなく、眼も奇麗にして置かないといけない」と言った。
ペリクレスの功績としては、くじ引きで植民地を分割したり、裁判や選挙に際
して日当を支払うようにした事が挙げられる。これらは、民衆を堕落させたとも
言われる。
キモンは大衆の人気を取る為に、貧民に給食をしたり、老人に衣類を与えたり、
庭の果樹園を解放したりした。しかし、ペリクレスにそんな財力はなかった。よっ
て、民心を買う為に国庫を解放したと、アリストテレスは評している。ペリクレ
スは大衆の人気を背景に、貴族の審議会から議決権を奪い、キモンをスパルタ贔
屓だとして陶片追放に処した。
前４５７年、スパルタがタナグラに侵入した。キモンは十年の刑期を待たず、
スパルタ贔屓の汚名を濯がんものと参戦した。しかし、ペリクレス一党はこれを
あくまで追放者とし、加勢はいらぬとばかりに命を惜しまず戦った。ところが、
キモンの一党はそれを上回り、奮戦の余り、ことごとく戦死してしまった。キモ
ンを追慕する気持ちがアテナイ市民に起こると、ペリクレスはこれを見逃さず、
キモンを迎え入れた。スパルタはキモンには好意的だったので、講和がなった。
キプロス遠征中、キモンは亡くなった。貴族派は、ペリクレスの勢力をそぐ為、
トゥキュディディスを擁立した。二人の対立によって、貴族と民衆の対立はかえっ
て深くなった。
ペリクレスは民衆の機嫌取りの為に、競技、宴会、行列を次々に催した。毎年
六十隻の船で、市民に有給の航海演習をさせた。また、五百から千単位の植民を
五つほど行った。
神殿建築は、ペリクレスの政治的業績の中で最大のものである。しかし、その
財源はデロス島に貯えられたデロス同盟の軍資金であった為、全ギリシアの非難
を浴びた。それは、ペルシヤ襲来に備えて、デロス島からアテナイに移転された
ものだった。全ギリシア人は、自分達が拠出した金を使って、アテナイ人が黄金
で町を飾り、見栄坊の女のように高価な大理石や神像や神殿を置いて外観を美し
く飾るのを見て、はなはだしい侮辱を感じた。
対してペリクレスは、我々は現にペルシヤ軍を斥けたんだから、その明細を示
す義務はない。同盟諸国は金を出したが、兵士、馬、船は出さなかったと弁護し
た。アテナイを神殿で飾れば、工事によって繁栄が得られ、あらゆる種類の仕事
が盛んになり、すべての技術を励まし、すべての手を促し、市民のすべてに賃金
を与え、町は自身を飾ると同時に自身を養うのだと持論を説いた。
壮年者は戦争によって給料を得るが、残る大衆にも金が回るように、しかも、
働かない者は除外するようにとペリクレスは考えて、大規模建築を行った。石、
青銅、黄金、材木、象牙の製造と加工、その運搬、船、馬、車に携わる者、道路、
鉱山に関わる者が賃金を得た。各々の職人は、見習いや下請けを抱えて、すべて
の年齢、天分に応じて、国庫の金が広くゆき渡った。
壮大で、模倣を許さぬ企画が挙がり、技術者は腕を競った。数代に渡ると思わ
れた物が、一代で完成した。それらの建築物は、美しさの点で古風だが、鮮やか
さの点で出来たばかりのように見える。それらの作品は、香気を放ち、永遠の魂
を宿しているように見える。
総監督はフェイディアスで、有名なパルテノンを作ったのはカリクラテスとイ
クティノス、エレウシスの神殿はコロイボス、上の柱列はメタネゲスが作り、天
窓はクセノクレスが設け、アテナイの長壁はまたカリクラテスが作った。
オデオン（＝歌の家）は、屋根は円形で頂点から斜面をなし、内部には多くの
柱と座席が並んだ。この様式はペルシヤ王のテントの模倣と言われるが、ペリク
レスがじきじきに監督し、音楽競技を行わせた。
プロピュライの神殿では、もっとも熱心な職人が転落事故を起こした。医者に
も見放され、ペリクレスも落胆したが、夢に女神が現れ、治療法を教えたので、
その通りにすれば完治した。これを記念に、ヒュゲイア（＝癒し）の女神像が建
てられた。
フェイディアスは多くの女神像を作ったが、ペリクレスとの友情を妬まれ、多
くの商売女をペリクレスに取り持ったと中傷された。この手の中傷は多く、ステ
シンブロトスは、ペリクレスが自分の息子の嫁と通じたと、ほぼありそうにない
話まで持ち出して非難している。
トゥキュディディス一派は、建築についてのペリクレスの浪費を弾劾した。ペ
リクレスは答えて、「では国庫の支出としないで、私の支出としよう。その代わ
り、奉献したすべての建築の銘は私個人のものとする」 すると、議場で、それ
は皆の支出にしてくれと声がかかった。ペリクレスは後に、トゥキュディディス
を陶片追放にした。
この追放以後、ペリクレスは民衆の機嫌取りを止めて、貴族的に、王族的に強
い政策を取った。民衆に対しては、説得と教化に努め、医者が慢性患者にするよ
うに、害のない楽しみを与えながら、厳しく指導した。ペリクレスにして始めて、
民衆の横暴を制止し、船の舵を取るように政治を行う事ができた。それは、弁論
のほかに、贈り物に左右されず金銭に超然としている生活態度への信頼であった。
すでに偉大な国家をさらに偉大で富裕な国家にし、その頂点に立つ事であらゆる
王や独裁者を凌ぎながら、この人は父の遺した財産を１ドラクメも増やさなかっ
た。
息子や娘たちは、ペリクレスが他人の為に出費するのを好まなかった。その為、
家計は切り詰められていた。
アナクサゴラスは自分の信条に従い、家を捨てて放浪していた。そして、食を
断って死のうとしていた。聞いたペリクレスが駆け付け、相談相手を失っては困
ると訴えると、「ランプを必要とする人は油を注ぐ」と答えた。
軍隊を率いるについては、安全を第一とした。博打のような出征は避けた。戦
功を重ねたトルミデスがボイオティア侵入を企て、千の兵を募った時も、ペリク
レスは思い停まらせようとした。「ペリクレスの言う事を聞かないとしても、あ
のもっとも賢明な相談相手を待てば間違いはない。それは、時である」 しかし、
トルミデスは出征し、多くの犠牲を出して亡くなった。
ペリクレスの遠征で評判が良いのは、ケルソネソスの遠征である。一千の植民
を入れたばかりか、その町はトラキア人を防ぎ、当時多かった海賊や山賊をも追
い散らした為である。
前４５３年、ペリクレスは百の艦隊を率いてペロポネソス周航を行った。ネメ
アではシキュオン人を潰走させ、味方のアカイアでは兵士を同乗させ、アカルナ
ニアとオイニアダイとを荒らした。アテナイが、敵にとっては恐ろしく、味方に
とっては頼もしい事を示した。
さらに、大艦隊を黒海に入れ、将軍ラマコスに１３隻の船を率いて、シノペの
独裁者ティメシレオスに当たらせた。シノペは解放され、さらに、アテナイ人六
百人が入植した。
多くの市民は、エジプト、シチリア、エトルリア、カルタゴにまで夢の版図を
広げていた。しかし、ペリクレスは正道から外れる事を拒んだ。焦眉は、スパル
タを抑制する事であった。
デルフォイの神殿のある地にフォーキスが入植したのをスパルタが追い払った。
ペリクレスは進軍して、再びフォーキスの人を入植させた。デルフォイ神殿の青
銅の狼の額に、神託に預かる権利をスパルタ軍が記すと、ペリクレスは同じ文句
を狼の右の脇腹に刻んだ。
度の過ぎた遠征をせず、勢力をギリシアに限ったのは正解であった。エウボイ
アが離反し、これを攻めた。すると、さらにメガラが離反し、スパルタ軍がアッ
ティカに迫ったので、急転してアッティカに引き返した。スパルタ兵は勇敢だが、
王は若く、側近も柔弱なのを見て、金で買収して撤退させた。スパルタ国民は、
王と側近とを追放した。
この時の十タラントンの支出は、民衆にも支持された。それは、平和を買う為
のものではなく、戦争に備えて時間を稼ぐ為のものと解釈された。
改めて、エウボイア、カルキスを陥落させ、ヘスティアイアに植民を行った。
この頃、ペリクレスはアスパシアという女に夢中になっていた。アスパシアは
客相手の商売をする女を多く養っていた。ソクラテスの訪問を受けた事もあり、
女ながら弁舌にも長けていた。ペリクレスの妻は、もともと離婚歴があったが、
クサンティッポスとパラレスとを産み、その後、夫婦仲が冷えた。妻はよそへ嫁
いで、ペリクレスはアスパシアと再婚した。朝夕、接吻を欠かさなかったと言わ
れる。これは、何かと喜劇のネタになった。クラティノスは露骨に妾と呼んだ。
エウポリスの芝居では、ペリクレスが「私の子は無事か」と尋ねると、相手は、
「淫婦の恥に身震いしてなかったら、とっくに立派な男になっています」と答え
た。
アテナイとスパルタとの間に三十年の休戦協定が結ばれた。これで後顧の憂い
はなくなった。
アスパシアはミレトスの出身であったが、当時、ミレトスとサモス島とは領土
争いをしていた。ペリクレスはアスパシアの為に、サモス攻めを決議した。
ペリクレスはサモスにて、支配階級の子弟を人質に取り、それをレムノスに送っ
た。ペルシヤ王の甥ピストネスはサモスに好意を持ち、執り成したが、ペリクレ
スははねつけた。しかし、ピストネスは勝手に人質を解放し、サモスを焚き付け
たので、サモスも好戦的になった。トラギアイで海戦となり、ペリクレスは４４
隻をもって７０隻を破った。
さらに、別艦隊が到着したので、サモスを包囲したまま、ペリクレスは６０隻
を持ってフェニキアからの援軍を迎撃すべく出航した。サモスの将軍メリッソス
は、残った包囲軍が柔弱であると見て、攻撃を再開、多数の捕虜と多数の戦艦を
得た。
サモス人はアテナイの捕虜を辱めて、額に梟の烙印を押した。それは、先にア
テナイ人がサモスの捕虜に、サモス特有の船の烙印を押した為である。
ペリクレスは急行して戦ったが、メリッソスは町に籠城した。
技師アルテモンの手になる攻城具で攻め、九ケ月目にサモスは降伏した。ペリ
クレスは城壁を壊し、軍艦を取り上げ、罰金を科した。未納分は人質を取った。
アテナイに帰ったペリクレスは戦没者の葬儀をし、葬儀の後に演説を行った。
多くの女たちが花冠や花輪を捧げた。キモンの姉妹エルピニケはこう言った。「ペ
リクレス、あなたの手柄は驚くべきものです。わたしの兄弟キモンはフェニキア
人やペルシヤ人と戦いましたが、あなたは同盟同族の町を滅ぼしたのです」
これは嫌味ではなく、当時はギリシア人こそが最強とされていた。また、サモ
スとの戦いは薄氷を踏むような危ういものであった。
コリントスとケルキュラとが戦争を始め、アテナイはケルキュラに援軍を送っ
た。コリントスはスパルタに泣き付いて、アテナイを弾劾した。メガラ、アイギ
ナも、アテナイを警戒するようになった。コリントスの植民都市であり、アテナ
イの同盟都市でもあるポテイダイアが離反した。
メガラとアテナイとは、エレウシスの領土をめぐって対立していた。アテナイ
からの使者がメガラで殺されたので、ペリクレスはアッティカ領に入ったメガラ
人は皆殺しにすると宣言した。
事態を収拾すべく、スパルタからの使者がアテナイに到着した。しかし、対メ
ガラ決議は民会で決議した後であった。ペリクレスは、決議板は取り外せないと
突っぱねた。使者は、外さなくて良い、裏返しにすれば済む事と知恵を付けたが、
ペリクレスは譲らなかった。これは、スパルタに対する挑戦行為と取られた。
ペリクレスの勢力が増したので、アテナイ民衆は、その回りの人間を告発した。
彫刻家フェイディアスは、その作品が見事なのと、ペリクレスの寵を得ているの
とで、民衆の嫉妬を買い、告発された。アスパシア、アナクサゴラスも告発され
た。アスパシアについては、ペリクレスが法廷で涙を流して懇願し、陪審員を説
得した。アナクサゴラスは国外に去らせた。フェイディアスは、戦争遂行の為の
取引材料とされて入獄し、病死した。
スパルタはペリクレスを失脚させようと、アテナイに風説を起こした。昔、キュ
ロンが神殿で命乞いをしたのに、メガクレスはこれを殺した。ペリクレスは母方
がメガクレスの子孫で、その血は汚れている、というものである。この風説は、
逆の効果を及ぼした。ペリクレスは、敵が一番憎み恐れるものと、市民の信頼と
尊敬を勝ちえた。
スパルタ王アルキダモスは、ペロポネソス同盟軍を率いてアッティカに侵入、
その地方を荒らした。アテナイは挑発に乗ると思われたが、重装兵六万に恐れを
なして、ペリクレスは籠城した。アテナイ市民は交戦を訴え、弱腰を罵ったが、
ペリクレスは耐えた。
その一方で、ペリクレスは百隻からなる艦隊をペロポネソスに送ったので、ペ
ロポネソス軍は引き上げた。海軍はペロポネソス地方を略奪して回り、ペリクレ
スは陸軍を率いてメガラを侵略した。さらに、アイギナの住民を追い出して、ア
テナイの植民地とした。
前４３０、疫病がアテナイを襲った。罹病者は粗暴になって、ペリクレスに反
抗した。ペリクレスは対策として、１５０の艦隊を作って、気持ちを引き立てた。
しかし、出航の時、日触が起こった。兵士は恐れたが、ペリクレスはマントで自
分の姿を隠し、これと同じ事が起こったに過ぎないと宥めた。
エピダウロスを包囲した所で、艦隊もまた疫病に見舞われた。ついにアテナイ
市民はペリクレスを弾劾し、票決した結果、ペリクレスは指揮権を奪われた上、
罰金を科せられた。
疫病は、ペリクレスの多くの親友をも奪った。また、先妻の息子は、ペリクレ
スが勢力の割に倹約家なのに苛立っていた。クサンティッポスは父の名前で借金
をしたが、ペリクレスはその尻拭いをせず裁判に訴えた。クサンティッポスは父
を憎み、家でのソフィスト相手の空論を暴露して父を笑い者にした。例えば、五
種競技の槍投げの際、投げた槍がたまたまエピティモスという人に当たって死な
せた。この場合、悪いのは槍か、投げた人か、という議論に一日費やした、とい
うものである。また、アスパシアについての誹謗も、クサンティッポスによって
撒き散らされた。
しかし、クサンティッポスもパラロスも疫病で死んだ。多くの人材が失われ、
アテナイ市民は、将軍にしても為政者にしても、ペリクレスに匹敵する人物がい
ない事を思い知らされた。家にこもっていたペリクレスを、ベーマ、ストラテギ
オン、アルキビアデスが呼び出し、公職に就かせた。
ペリクレスも罹病したが、それは急性のものではなく、ゆっくりと体力を奪っ
ていった。いよいよ死に臨み、友人たちが集まって、ペリクレスの功績と勝利と
を標柱にすべく数えたが、それは九つもあった。
この人の偉大な点は、あれほどの業績の中で保たれた、温和さ、親切さ、気位
の高さである。ほとんど全権を握りながら、嫉妬や立腹に心を動かされなかった。
この一事が、オリュンピオスという仇名を、もっともなものとしている。
金銭に対する気位の高さでは、ペリクレスの潔さは随一で、捕虜の身代金を私
費であがなったファビウスもこれに比肩する。ファビウスの資産は六タラントン
に停まったと言われる。
ペリクレスの権力は絶大で、様々な利益や援助が期待できたのに、一切の賄賂
を受け取らず、潔く身を守った。
ペリクレスによるアテナイの神殿建築は見事で、帝政以前のローマのすべての
建築を合わせても比べるに足りない。その偉観と豪奢は古代世界に燦然と輝いて
いる。
寸評
パルテノンは、ピラミッドにつぐ古代の公共事業です。
しかし、建設業に従事する者から言わして貰えれば、慢性的な公共事業は、放
漫財政と、それに依存する寄生虫的な民間業者（＝潜在的失業者）とを産み出す
だけです。十年か二十年に一度、本当に不況でどうしょうもない時、ここぞとい
う時に出して貰いたいものです。