スピード

　高層ビルのノンストップ・エレベーターに爆弾テロ。時間がない。屋上のウィ ンチでエレベーターを吊るす。エレベーター構内、扉部分など、職人風で楽しい。 追い詰められた犯人は相棒を人質に取る。かねて公言通り、相棒の足を撃って犯 人をひるませるジャック。
　表彰、警官は金の腕時計と年金が楽しみ。
　ジャックの眼の前で友人の運転するバスが爆発炎上。近くの公衆電話が鳴る。 高速を行くバスに爆弾を仕掛けたと脅迫。時速50マイルを越えて始動、50マイル を切ると爆発。設定に無理がある。感情移入できない。しかし、ディテールを積 み重ねる事でそれを克服する作品。
　バスとのカーチェイス。乗り込むジャック。
　乗客のひとりが興奮して発砲。運転手に当たる。アニーが運転を変わる。
　高速を降りて市内へ。乳母車を跳ねるが中は缶詰。路肩を走り、左側を逆走す るバス。警官隊が建設中の道路に誘導する。
　床板を剥がして爆弾を見るジャック。腕時計が使われている。
　負傷した運転手を疾走するパトカーに移す。中継で、犯人に知れる。
　ずっと先に未完成の部分あり。加速して飛び越えるバス。
　ジャックの判断で空港に入る。未使用滑走路をぐるぐる回るバス。
　犯人の要求を呑むよう本署を説得する為、ひとりバスを降りるジャック。みな 罵る。再び現れた時は、前方のパトカーから台車に引かれて。台車に乗ったまま バス下に潜り込むジャック。客も感動。自動車整備工を喜ばせる。電話連絡を取 りながら爆弾を調べるが無理と判断。空港の悪路の為、ワイヤーが切れる。ジャッ クはドライバーでバス下にしがみ着くがガソリンタンクを傷付ける。
　腕時計の線から、本署で犯人の住所を割り出す。ジャックの相棒を含む十人が 突入。爆発。実は腕時計は誘いだったと語る犯人。悔やむジャック。
　慰めるアニー、何故か犯人はアニーの上着の模様を知っていた。そこから、バ スにカメラが仕掛けられ、衛生中継で犯人側に放送されている事が判る。
　マスコミの中継車で電波を拾い、それを録画する。同じ周波数で発信。犯人に 録画映像を送る。映画史上初のトリック。
　乗客は全員脱出。ジャックとアニーはもたついて床板に乗って脱出。そりのよ うに引きずられた後、傷つきながらも生還。もぬけの殻のバスは飛行機に追突炎 上。
　現金引き渡し要求の電話。犯人はまだ気付いていない。
　取引現場を囲む警官隊。ジャックとアニーの姿も。ふたりはリラックス気分、 これが命取りに。異変に気付いた犯人。警官の制服に身を包み、アニーをおびき 出す。現金は地下トンネルから奪取。現金のない事に気付いたジャック、犯人を 追う。地下鉄構内で見た影は犯人ならぬアニー、体に爆弾をくくり付けられてい る。犯人はアニーを連れて地下鉄ジャック。手錠でアニーをパイプにつなぐ。運 転手を射殺。屋根の上に居るジャック、犯人に勘付かれ、屋根の上で格闘。赤信 号で頭を飛ばす。
　車内に降りるジャック、アニーの手錠を外せない。死を覚悟する二人。心中物、 アベック強盗物のよう。ガントレッドみたい。アクション映画が一転してラブス トーリーになる。地下鉄の行く手は工事現場、速度を増して脱線させようと計る ジャック。市街地へ飛び出した先頭車両の中で、延々と口付けを交わす二人。市 民の輪が出来る。クロコダイル・ダンディーを連想させる。アメリカの人情が出 ていて良い。

寸評
　終盤、ダイナマイトを着せられたアニーの美しさは、ここ十年来のアメリカ映画で最高のもの。さらに、手錠で地下鉄の支柱に結ばれた姿は、なみうつ荒磯に鎖でつながれたアンドロメダ姫を思わせる。「ゴースト」のデミ･ムーアと双璧の美しさだ。やはり女は、縛られたり、泣いていたりする方が良い。それも、前半の大活躍があればこそで、最初からピィピィ泣いていたのでは、ただの馬鹿な女という印象に終っただろう。