ダーティハリー

　屋上のプール、黄色い水着で泳ぐ女性。ほかのビルの屋上から狙う狙撃犯。
　現場検証、遠くのビルの屋上に眼を付けるハリー・キャラハン刑事。ボールペンの先で拾う空薬莢に哀愁が漂う。さらに予告状。
　次は黒人か神父を狙う、止めたくば十万ドル寄こせとの内容。市長、部長、ハリー刑事、対策を練る。この間のような騒ぎは起こすなと釘を刺されるハリー。暴行魔を射殺した件。聞かん坊のハリー。
　大学で黒人を狙う犯人。笑顔が可愛い。警戒中のヘリコプターに呼び止められて逃げる。
　ぶらりとホットドッグ店に入るハリー。銀行の前で止めているクルマの排気ガスについて尋ねる。店の主人に警察に通報するよう頼むハリー。騎兵隊が来るまで待ってくれよとホットドッグを頬張るハリー。すべて見通しながら、積極的に解決しようとはしないニヒルな性格が出ている。銀行で警報、銃を構えるハリーにひとりが発射、それを撃ち返す。クルマで逃げる一味に一発見舞って、クルマは消火栓を倒して横転。口を動かしながら撃つ、ぼさぼさ髪に風が当たってかっこ良い。最初に負傷したひとりの近くにライフルが残っている。ハリーのブラフ。
　ハリーにメキシコ人の相棒チコが付けられる。
　深夜、自殺志願者を狙撃犯と間違えて呼び出される二人。薄情に突き放した応対で、自殺を思い留まらせるハリー。
　黒人居住区近くの公園、十才の少年が撃たれて死ぬ。
　犯人の囲い込み。昼はヘリで警戒、夜は警官を配置。残された一箇所に犯人を誘い込む。
　深夜、標的を買って出た神父が教会の扉を閉める。マンション、黒の下着姿、さらには全裸でうろつき回る女性に見取れるハリー。双眼鏡を動かすと、屋上の戸が開いている。チコにライトを当てさせて犯人を狙うハリー。犯人の持っているのはマシンガン。ライトを撃たれ、屋上のネオンまで撃ち落とされて形勢不利なふたり。犯人は逃走。
　第二幕、犯人は二十万ドルを要求。誘拐されたのは十四才の少女。下着と、髪と、無理に抜かれた奥歯が送られて来る。奥歯のアップは始めて。ハリーは電話の指示に従って鞄を届けるだけ。チコは捜査から外す。
　部長に無断でチコと無線を通じるハリー。折り畳みナイフを靴下に隠し、部長にセロテープを借りるハリー。
　どこかに呼び出されるハリー。次は地下鉄。地下鉄を降りてすぐ公衆電話に駆け付けるハリー。ここからは走り。絡んできた暴漢三人を退治し、公園に駆け付けると、老人が電話を取っている。次は十字架のある公園。オカマが話しかけてくる。「あたしアリス、自殺しちゃうから」
　夜空に照らし出される十字架、犯人の声。銃を捨てろ、壁に手をつけ。出てくる犯人。ハリーに暴行を加える。お前を殺す前に教えておこう、少女は殺す事に決めた、と嘘ぶく犯人。駆け付けるチコ。チコと犯人とで銃撃戦。犯人の弾がチコに当たる。靴下に隠したナイフを犯人の脚に突き立てるハリー。
　肋二本折ってソファに横たわるハリー。チコは入院したが助かるらしい。救急病院から脚の怪我を治したとの連絡。医者は患者をどこかで見たと話す。少女の命が懸かっているんだと迫るハリー。スタジアムでプログラムを売っていたと教える医者。
　夜霧のカイザー・スタジアム。臨時の相棒と急行するハリー。金網を越え、部屋に迫るのを見守る犯人。部屋はもぬけの空。犯人を追うハリー。肥満の相棒がライトを付ける。煌々と照らし出される犯人。一発撃って今度はふくら脛に命中。
「俺は怪我をしているんだ、弁護士を呼んでくれ」と見苦しく命乞いをする犯人。少女はどこだと撃ったばかりの足を踏みつけるハリー。
　夕暮れの金門橋にハリーのシルエット。変わって、地面から掘り出される少女の遺体。
　第三幕、地方検事に呼び出されるハリー。捜査令状なしでの不法侵入で得た証拠、犯人への拷問で得た証言は一切無効。法律学者も苦虫を噛む。
　子供達の遊ぶ公園、笑顔で近付く犯人が無気味。そこにハリーの影が。ストリップ付きの酒場。犯人と少し離れて席を占めるハリー。犯人は不快そう。
　晴れた青空、空き地の近く、廃ビルの地下に躍り込む犯人。黒人に二百ドル渡す。椅子を進められる犯人。黒人のパンチ。八発くらい叩いて、本当に二百ドルも良いのかと危ぶむ黒人。毒づく犯人の顔は醜く歪んで、血糊べったりでショッキング。さらに何発か殴り、おまけを見舞う黒人。
　報道陣の囲む中、犯人を載せた担架が病院の廊下を進む。「警察は俺を疑っている、警察が暴行したんだ」と叫ぶ犯人。
　その録画を見せられて、尾行を止めるハリー。
　終幕、近くの商店で銃を盗む犯人。
　スクールバスに乗り込んで運転手に銃を突き付ける犯人。
　市庁舎に呼び出されるハリー。犯人は子供七人を人質に取り二十万ドルを要求。空港に飛行機を待たせ、子供達とともに飛行機に乗ると言う。現金の渡し役を頼まれるハリー。ただし一切の抵抗はするなと釘を刺される。では、お断りだと出てゆくハリー。
　家へ帰りたいと愚図つく子供達。殴ってでも歌を歌わせようとする犯人。みな声も出ない。みんなのママを殺してしまうぞと脅す犯人。泣きじゃくる運転手。
「漕げ、漕げ、漕げよ、もっと漕げよ、ランランランラン川下り」
　橋の上にハリー。立ち姿がかっこ良い。
　バスはセメント工場に入る。セメント工場での撃ち合い。
　川で釣りをする少年を楯に取って、銃を捨てろと脅す犯人。銃を捨てる振りをして、犯人の肩を撃つハリー。
　釣り場で銃を取ろうと屈む犯人。ハリーが銃を突き付ける。弾が残ってるかどうか。ハリーのブラフ、構わず銃を取り、撃ち抜かれる犯人。ハリーはバッヂを捨てる。

寸評
　狙撃、電話リレー、法廷問題と、目まぐるしく角度の変わる内容。電話リレーはダイハード３、バスから空港へはスピードに受け継がれている。電話リレーはゲームみたいなので、冒頭からこれを持って来ないのは正解。色っぽいカットが四箇所ある。さもなくばハード・アクション。銀行強盗と消火栓は今も斬新。もっとも衝撃的なのはスタジアムの場面。クライマックスは意外と凡庸。それを救っているのがブラフ。

　効いてますねえ、換喩的な表現が。誘拐された少女の奥歯のアップ、むりやり歯を抜くくらいだから、ほかに一体どれほどひどい目に合わせてんだろうと想像させますね。本当は、監督のドン・シーゲルの虫歯かも知れないのにね。おっさんの歯を見て、やきもきしている客は阿呆です。遺体発掘の場面、オールヌードなので成人指定になったようですが、ロングショットなのでいやらしさがありません。少女を救えなかったハリーの無念さがよく出ている場面です。そこにも陰惨な印象が付きまとうのは、やっぱり「歯」が効いてるんですよ。