フランケンシュタイン

　十八世紀末、北極点を目指す船、氷に囲まれ動きが取れない。なおも進もうと する船長、全財産と五年の歳月をかけたと言う。叫び声、博士に出会う。理想の 愚かさを説く博士、この辺り、投機熱に浮かれたバブル時代を批判している。
　博士の少年時代、続いて青年時代。勉強に熱中する博士をダンスに誘う母、女 の優しさが滲み出る。その母が出産で死ぬ。熱中する事への批判、生への執着が 生まれる。
　研究に熱中する博士、外へ連れ出すエリザベート、山で雷を拾う。
　ロンドン留学、神学派の教授を批判、異端派の教授に見込まれる。この教授、 遺体蘇生をすでにやっている。お人好しの親友。
　コレラ流行る、ワクチンの接種。ならず者のデ・ニーロ、体に針を刺すのは神 への冒涜だと教授を殺す。生への執着が増すとともに、研究成果が手に入る。
　閉じこもって実験を続ける博士、恋人に会おうともしない。実験の成功、怪物 の姿の醜さにすべてを投げ出す博士。
　さまよう怪物、コレラ患者と間違われる。村の納屋での暮らし、百姓を陰なが ら助ける怪物。地主が百姓をいじめる、後先見ずに地主を殺す怪物、怪物は百姓 に追われ、百姓は村を出る。
　日記から博士の居所を突き止める怪物。屋敷では結婚式の支度、はしゃぎ過ぎ だと娘をなじる召使の母。怪物は幼い弟を殺す。探しに出た召使の娘はくたびれ て納屋で眠る。この娘が弟殺しと間違えられ、村人から縛り首にされる。無理が あるが、リアルな死体蘇生の後では、何があってもおかしくないという気持ちに させられる。怒号や群衆の狂気が見たいという気持ちにさせられている。
　夜、怪物の訪問、氷の山まで来てくれと言う。怪物の告白、たったひとり愛せ る人が居れば、全人類を許せる。友達を、女を作ってくれ。助けてくれとまで言 われる博士。承知する。
　実験を再開する博士、エリザベートは出て行く。持って来られたのは召使の娘 の遺体。自分への思いを知っているだけに承服できない博士。怪物は復讐を誓う。
　捜索隊は山へ。落ち込む博士を慰めるエリザベート、今すぐ結婚してと迫る。 初夜、笛の音に博士が出た隙に、エリザベートの心臓を掴み出す怪物。その顔は 火の中へ。
　エリザベートの為に実験再開。つぎはぎながら、蘇生成功。蘇生したエリザベ ートを奪い合う博士と怪物。苛立った彼女は頭から火を浴びて屋敷内を走る。
　すべてを語り終える博士、疲れ果てこと切れる、船長はたわ言だと取り合わな い。なおも北行きを命じる船長。おめき声、船の中にいる怪物が泣いている。火 葬、氷が割れる。博士とともに身を焼く怪物。船長は帰港を命じる。故郷へと。

寸評
　全編、理想主義への批判に貫かれている。そう、理想よりも自由です。