バックドラフト

　二十年前、少年の見守る前で父の消防士が死亡。仲間がガス管を突いて火に呑まれそうになったのを助けて、代わりに火に呑まれたもの。

　兄スティーブは消防隊長、弟ブライアンは転職を繰り返し、シカゴに帰って来る。

　初日から遅刻するブライアン、最初の現場はアパート。違法駐車のクルマの窓を斧で割ってホースを通す。アパート内、炎には怪物のような声が被せられて狂暴さを感じさせる。応援は来ない。酸素不足から消えゆく炎、また出て来るぞと助言する兄。熱気がこもるので壁を壊す。炎は上の階に拡がっている。そこに踏み込む消防員。階下の炎が床を破り、ひとりが落ちそうになる。女性の悲鳴を追って戦列を離れるブライアン。弟が命懸けで助けたのはマネキン。もうひとりの新人が女性を助けている。

　通りがかる市会議員、消防予算削減の為、応援がなく、仲間がもう三人も死んでいると喰ってかかるスティーブ。
　帰って休憩。父親の友人アルコックスが皆を励ます。
　消防仲間のダンスパーティ、舞台ではアイルランドの少女舞踏団が足踏みダンスをしている。市会議員がブライアンに接近を計る。議員の秘書はブライアンの昔の彼女。別居中の妻が色っぽいドレスで他人と踊っているのを見て、割り込んで話しかけるスティーブ。感情を害した相手が、弟がマネキンを救った事をからかったので、殴りつける。乱闘。
　訓練風景、ホースを担いで非常階段を駆け登る兄弟。一寸した行き違いからすぐ言い争いになる。
　アパート火災、中に子供が居る。俺は火が読めると語る兄貴。戸を蹴破って、噴き出す炎をかわし中に入る。呼吸が良い。あとあと火勢を増す炎に、入るに入れない弟。見事子供を助ける兄。弟は自信を無くす。
　議員の仲介で火災調査官の助手を勤めるブライアン。オフィスで着替える調査官の背中はケロイドだらけ。不審火による死亡事故を調査中。室内に静かな火が燃え拡がり、人が戸を開ける事によって酸素を得た火がバックドラフトとなって戸板ごと人を撥ね飛ばす。人は死に、火は鎮火する仕組み。
　往年の放火魔の仮釈放裁判。学者を押し除けて、黒焦げの人形を突き付け、放火魔の本心を聞き出す調査官。
　夜、船上での議員の応援パーティ。こんな時間でも消防車は走っている。秘書と抜け出すブライアン。消防署を案内する。消防車の上にはホースが積まれている。決して柔らかくはないホースの上に身を横たえる女の体がなまめかしい。ラブシーン。消防署に対するブライアンの愛着が本物だから、こんな不謹慎なシーンも許される。ふたりを乗せた消防車は、先の消防車を追って出動。現場でブラジャーの絡まったホースを取って不審顔の消防士。車の上には二人が居る。
　この現場は高層ビル火災。派手な炎はないが、どこかから煙が出ている。灯りがちかちかして無気味さをそそる。応援を待てと言うアックス。隊長は果敢に火の元を探す。触って温度を確かめてから戸を破る。新人がいきなり戸を破ってバックドラフトを浴びる。中にもうひとつの死体。新人は重症。隊長を見る皆の眼は冷たい。居合わせるブランドン。
　病院へ見舞、兄をなじる弟。弟を殴る兄、兄の腹にタックルをかます弟。その頭が病院の天井の設備を壊す。芸が細かい。
　放火で亡くなった三人は会計事務所を開いていて、みな議員とつながりがある。議員が消防予算を削り、幾つかの消防署を閉鎖し、その跡地に市民センターを建て、業者から賄賂を貰っている所までは判っている。しかし、放火と関連がない。深夜、議員邸を訪れる調査官とブライアン。ガス漏れ、電気がショート。議員は殴られ倒れている。何者かが二人の邪魔をする。乱闘、逃げられる。何とか二人を外に運び出す調査官。着火、爆発。重症を追う調査官。
　議員はぴんぴんしている。入院中の調査官、何かがずれていると語る。ひとり、かつての放火魔を訪ねるブライアン。問答の末、この犯人は火に詳しく、火を嫌っているとのヒントを得る。
　兄のボートを訪ねるブライアン。ふと見た油罐に、焼死体から検出された薬品名を見つける。血相を変えて飛び出すブライアン。
　消防署で兄のロッカーを調べるブライアン。不審物はない。シャワー室から現れるアックス。肩に乱闘の怪我がある。追って駆けつけてきた兄。あの油罐はアックスから貰った物だと語る。消防士だから勘が良い、もう真相を見抜いている。そこへ化学工場の火災。出動する兄、見送る弟。二階でアックスが冷たい眼で見降ろしている。勘付いている。火災現場で兄を亡き者にするかも知れない。追って出動する弟。
　工場近くで消防車一台が横転。スムーズには行かない。
　内部を火に包まれた工場。屋上の天窓から火が噴き出している。階下に入る段取りをする消防士。工場内で議論をする三人。身内の娘が事務所に居て不正を知った、俺は放って置けなかったと語るアックス。焼け崩れる梁が三人を分ける。川沿いの工場なので、川からは船が放水をしている。エレベーター・シャフト内に落ちて溺れる弟、兄が助ける。
　金網の通路上で再び出喰わす兄とアックス。斧を構えて、やる気を見せている所に好感が持てる。しかし、タフなスティーブに適う訳がない、力なく斧を落とすアックス。下から爆発物が発射、通路を壊す。最後までアックスの手を離さない兄だが、ともに落ちる。下の通路に落ちるが、腹を刺して重症の兄。
　兄を介抱する弟。離れた所に応援が来ているが、爆発のせいでホースを離してしまう。炎の中でひとり水竜のように踊り狂うホース。近付こうにも近付けない。工場内の消火器を炎に投げ付けて、少し火勢を衰えさせた隙にホースを持ち、仲間の進む道を作る弟。
　救急車の中、弟の見守る前、懸命の手当も空しく息を引き取る兄。アックスの事は伏せろと言い残す。
　雨の大通り、ふたりの殉職消防士の為に葬送行進をする消防隊。これほどの事をしてくれればと思わせる。
　市長戦に立候補する議員、記者会見の席へ調査官とブライアンが割り込む。消防署を閉鎖する為、嘘の報告書を作らせた疑い。
　火災現場へ向かう消防車の中にいるブライアン、後輩の防火服の釦の留め方を直してやる姿は一人前の消防士。

寸評