ヴェニスに死す

　　トーマス・マン、関楠生訳、中央公論社、1965。

　アッシェンバッハ、五十才、世間に認められた芸術家。ミュンヒェンの街頭で旅人を見て、旅愁に捕われる。
　夜汽車でトリエステに、さらに船に乗りヴェニスへ。派手に若作りした老人がはしゃいでいるのを見て驚く。
　ヴェニスには海路で寄るべし。まばゆいばかりの幻想的な建物、壮観な宮殿とためいきの橋、旅人は畏敬の眼で見る。
　酔った老人が絡んで来る中、下船。
　真っ黒なゴンドラに乗る。サン・マルコへ頼んだのにリドヘ行く、船頭と話が喰い違う。
　楽師を乗せた小舟の接近、チップ払う。ゴンドラを降りると、闇で営業していた船頭はとんずら。荷受けにチップ。
　予約をしていた海浜ホテルに入る、散歩して夕食待ち。米、露、英、仏、雑多な中にポーランド貴族の一家。家庭教師、十五から十七までの三人の娘、そして十四程の少年。その美しさに驚嘆。姉妹の固苦しさはなく、リラックスした上品さがある。気紛れに甘やかされた子という印象。
　鼻の高い、大柄な婦人の入場。母親について食堂に入る家族。アッシェンバッハも食堂に入るが、一家とは遠く離れた席。
　翌朝、鈍く曇った空、干潟の匂い。
　九時、朝食用ビュフェ、ポーランド家族はいるが、息子は朝寝坊で遅れる。改めて、神に似た美しさ。傑作に出会った時と同じ感動。
　昼、浜辺のデッキチェアを定位値とするアッシェンバッハ。ロシア人一家に敵意を見せる少年、仲間からはアジョと呼ばれている。婦人の声、はっきりタジューと聞こえる。タデーウスの略。本を読んだり、原稿を書いたりしながら、片時も少年を忘れないアッシェンバッハ。自分は彼を守る為にここに居るのだ。
　エレベーターで、少年達と乗り合わせるアッシェンバッハ。タジョを間近で見る。伏し眼がちの少年、美は人を受け身にする。
　ヴェニスを散策するアッシェンバッハ、もともと体力のある方ではない。サハラ越えの熱風シロッコ、干潟の匂い。たまらず、出発を決意。
　サン・マルコまで、あちこちに寄るゴンドラ。レース工場、ガラス工房など。昔日の面影を失った海の女王の、巾着切りのような商売人根性。
　翌朝、さっさと追い出しにかかる海浜ホテル。ヴェニス駅、トランク類は手違いでコモへ送られた。再びホテルで荷物を待つ決意。似た部屋、タジョとの再会を喜ぶアッシェンバッハ。
　場所は限られ、日課も決まっている中、度々タジョと会うアッシェンバッハ。タジョに仕える年上の少年。
　小川のほとり、哲学を語るソクラテスと美少年パイドロスのいる光景。
　タジョに声を掛けそびれるアッシェンバッハ。
　早朝、曙の女神エオスの起床。クレイトス、ケパロス、オリオンら美青年をはべらせる女神。向こうの、世界の果てで、ばらの花がふり撒かれる。子供らしい雲が、小童のように薄靄の中を漂う。黄金の槍が何本も、下から高い空へきらりとひらめく。灼熱と烈火は音もなく、神々しい圧倒的な力でぐいぐいとのし上がってくる。まばゆい光を浴びて、ひとり座るアッシェンバッハ。彼は眼を閉じ、赫々たる光にまぶたを接吻させた。火のように華麗に始まった一日。
　ただ顔見知りというだけの関係、挨拶もせず言葉も交わさず、距離を守り続ける人間同士の関係ほど、不思議で微妙なものはない。充たされず、不自然に抑圧された認識欲と交際欲のヒステリー。加えて一種の緊張した尊敬。判断できない限りは相手を愛し、尊敬するもの。憧憬は認識不足の産物。
　淡い認知の芽生える、タジョとアッシェンバッハ。わざわざ近くを通るタジョ、眼を上げると、必ず眼が合う。
　いつになく夕食に現われないポーランド一家、外で食事を済ませて帰る。出会いが不意だった為に威厳を保てず、喜びを露わにするアッシェンバッハ。苦笑するタジョ。
　滞在四週間、客の減るリド。ドイツ系の客がへって、耳にするのは外国語ばかり。街に満ちる消毒の匂い、予防の為としらを切る商人。
　日課や幸運の助けを借りて美少年に会うだけでなく、後を付けたり、待ち伏せたりするようになったアッシェンバッハ。聖堂の蝋燭ごしに見る少年。尾行する毎日。空をスレートのように染める靄を通して激しく燃える太陽。
　タジョの部屋のドアに額を付けて立ったままのアッシェンバッハ。
　ホテルのロビーからはドイツ系の新聞が消える。あちこち情報収集するアッシェンバッハ。
　宵、マンドリン、ギター、アコーディオン、バイオリンの大道芸の一団。見事に笑いを取る頭、六歩離れた所にタジョ。流行歌を歌う男、なかばは娼婦のひもで、なかばは役者。残忍で向こうみず、危険で面白そうな人物。金を集めて引き取る前に、最後の一曲、笑いのリフレイン。冷静なアッシェンバッハと、それを見習うかのようなタジョ。
　銀行の出納係りから事情を聞き出すアッシェンバッハ、数年前から蔓延するインドのコレラ。東はシナへ、西はペルシヤへ。陸路を警戒するヨーロッパ、怪物は海を渡って地中海の港へ。隠蔽を迫る当局に、衛生長官は辞任、後任には融通の利く人物。民衆だけがそれを知っている。
　ポーランド一家に近付けぬアッシェンバッハ、サバト＝魔女集会の幻想。
　ホテルの理髪室、白髪を気にかけるアッシェンバッハ。立派な方は外見に関心を持たない、とおだてる理髪師。髪を染め、眉を描き、口に紅までさす。「これで恋ができます」
　蒸し暑さのますヴェニス、化粧で隠した疲労。まるで誘うように、家族より遅れて歩くタジョ。見失って、広場に倒れるアッシェンバッハ。
　三日後、遅くに起きたアッシェンバッハ、玄関には多くの荷物が。ポーランド一家は昼過ぎには発つとの事。
　ほとんど人気のない浜辺。タジョに格闘を挑む年上の少年、助けようと身を起こすアッシェンバッハ。逃げ出すタジョ、宥めようとする少年、振り切られる。
　陸からは水で隔てられ、友達からは尊大な気持ちで隔てられた孤独なタジョ。片手を腰にポーズを取る、ついて行こうとするアッシェンバッハ、倒れる。

寸評
　ほとんど映画の通りです。

　郵便局で崩折れる発病者が、原作にはないもので、名演技でした。あの映画、主役の少年は美しいけど、それ以外は残酷で、醜い物を平気で撮っている。それを解脱したようなマーラーの音楽が救って、原作、音楽、映像が一体となって、素晴らしい効果を上げています。屋外ロケが多くて、ビスコンティ映画では意外と一番金がかかってんじゃないですか。

　マーラーの弟子というのも、原作にはないものでしたね。アングロ系の俳優が演じてましたけど、悲劇の音楽家ブルーノ・ワルターではないでしょうか。ビスコンティは赤い公爵と呼ばれ、ミラノ・スカラ座も、最後までファシズムに抗した音楽の殿堂だったんですね。

ある詐欺師の告白

　　　高橋義孝訳

　ライン河畔、ローレライ銘柄のシャンパン醸造元エンゲルベルト・クルル商会。父はフランス被れ、母は浪費家、芸術肌の居候シンメルプレスター。
　婚礼や祭典の席を祝って空けられる、ローレライ・エクストラ。飲んで二、三日は調子がおかしい。混ぜ物が多い。
　フェリクスの誕生、乳母車の中で口をへの字に曲げ、王様ごっこをするフェリクス。
　浪費家の両親、マインツやヴィスバーデンから客を招いては宴会。夜更けてのどんちゃん騒ぎ、ダンスは猥雑なものになり、罰金遊びは、接吻をしたり、体をいじったりする口実になった。突然、ガス燈の消される悪ふざけで、夜会は最高潮。
　フェリクス八才、家族で温泉街へ。楽長を陰に立たせ、ヴァイオリン弾きの真似をして喝采を浴びるフェリクス。温泉客は神童扱い、ダイヤモンドのブローチを首に授ける老侯爵夫人。
　シンメルプレスターのモデルを勤めるフェリクス。ローマの笛吹き、イギリスの小姓、スペインの闘牛士等に扮する。この子には衣裳の才能がある。
　フェリクス十四才、ヴィスバーデンで芝居見物。劇場は娯楽の教会。女蕩しの大使官に扮するミュラー・ローゼ、その美男っぷり。忘我状態の観客。
　楽屋を訪ねる父、旧知のミュラー。化粧を半分落とした顔、体には吹き出物。しつこく客の反応を聞く。
　学校が嫌さに父の筆跡を真似るフェリクス、嘘の証明書を書く。姉、母、主治医に対して仮病を使う。
　近所の菓子屋で駄菓子をくすねるフェリクス、ちょうど人気のない時間帯がある。魅せられたように立ちすくむ、怠け者の楽園、ポケットや長靴へ宝石を詰め込む童話のよう。
　フェリクス十六才、長い婚約期間にうんざりした三十過ぎの女中ゲノファーファに抱かれる。
　クルル商会の破産。ユダヤ人の銀行家との口論、醸造所、事務所、家屋も競売に付される。父のピストル自殺。
　シンメルプレスターの采配、母はフランクフルトで下宿経営、姉は歌手。パリのホテルに就職口を求めるフェリクス、とりあえず母の下で待機。みすぼらしい身なりで、金もなく、フランクフルトの都会をうろつく。宝石、家具、衣服のショー・ウィンドウで眼を肥やす。ホテル二階のバルコニー、幸せそうな若い兄妹に深い印象を受ける主人公。
　芝居がはねた劇場の前をうろつき、辻馬車を拾うアルバイトをするフェリクス。
　徴兵検査。入隊を志願しながら、てんかんのふりをするフェリクス。家族のいきさつを話し、父親が自殺するくだりで発作。不合格。
　文無しながら、美貌ゆえ、娼婦に愛されるフェリクス。深夜の喫茶店、若い娼婦と眼が合う。からのポケットを見せたが、それでうなづく女。
　北停車場から入ったパリは、それほど華やかではない。Ｓtジェイムズ・アルバニー・ホテルに就職。
　税関の混乱で、隣の婦人の小箱がトランクに紛れる。
　四号寝室に案内される。寝台は八つ、荷物はトランクのみ。あんな苦労までして兵営から逃げ出す必要はなかった。例の小箱を改めると、大粒の黄玉に、ダイヤの首飾り。お前は良い物を持ってるんだなと、後ろから声。クロアチア出身のスタンコ、闇取引所をほのめかす。そこへ、仕事を終えた仲間の到着。
　六時起き、洗面の順番待ち、すでに濡れたタオル、髭を剃るのに鏡を借りるフェリクス。カフェオレと菓子パンの朝食。病床のスタンコ、分け前三分の一で、闇屋の住所を教える。
　経営者との面談、本日からアルマンと名乗れ。制服を貰い、仕事は明日から。ぶつを持って闇屋へ。500、800から、4400フランまで値を釣り上げるフェリクス。それでも、思ったよりは低額。服を買い、ステーキを食べ、カフェに陣取って往来の眺めを楽しむ境遇をわが身に恵んでやる。見栄を張って高額の分け前を渡すと、千フラン返す、気の良いスタンコ。
　エレベーター操作係りに就く。宝石箱の持ち主ウプレ夫人と隣合わせる。荷物を運ぶと、私の為に時間を割いてくれと誘惑される。「衣裳も脱がしてくれる、大胆なしもべ」
　十一時、カムイン。美少年好きの夫人、物も書いている。蔑まれ、責められるのが希望だが、沿いかねる主人公。代わりに金目の物を持ち去る。クレディ・リヨネに口座。
　余暇、スチュードベッカー・サーカスの見物。跳躍技、道化。中でも見事な空中ブランコのアンドロマーシュ、体操選手なみと絶賛。続いて猛獣使い。アシル、ネロと呼ばれ、それ自体無礼千万な席である台の上に座るライオン達。
　泥棒稼業を勧めるスタンコ、断るフェリクス。
　給士係りへ配属、収入が減って、まずは残飯掃除。やがて食堂へデビュー、メニューを渡し、皿を下げ、テーブルの上を掃除する。やがて婦人客が、調味料を取るのに呼ぶようになる。副頭へ出世。
　金持ち娘のエリナー、給士されるうち、アルマンに惚れる。両親の眼を盗んで会いに来るエリナー、さすがに軽率に振る舞えず、教え諭すアルマン。人眼を憚らず、泣きに泣くエリナー。
　スコットランド貴族のキルマノック卿、ホテルを辞めて召使になれと勧める。これは、孤独な心の持ち主の希望。
　酔ったエリナー、駆け落ちをそそのかす。断られて号泣、それを慰めるキルマノック卿。私には子供がいない、養子にしたいとの申し出。私のような青年は幾らでもおりますとアルマン、大粒のエメラルドの指輪を抜き、受け取ってくれと卿。
　同年輩のヴェノスタ侯爵と懇意になるアルマン。パリで絵の勉強、歌姫ザザを伴う。マダムと呼んで機嫌を取るアルマン。
　変装してリッツ、ブリストル、モーリスといった高級ホテルで食事を取る事もあるアルマン。
　サン・ジェルマンのテラスでオペラの開演を待つひと時。歩み寄るヴェノスタ侯爵。ザザとの仲を割こうとする両親、熱を冷ます為に世界旅行を提案。呑まなければ廃嫡。切符と信用状とを渡して、代わりに行ってくれと提案。筆跡をまね、愛称と家族構成を聞くアルマン。12000フランの口座を渡して、感激されるアルマン。
　イニシャル入りの時計、鎖、小物を貰うアルマン。リスボン行きの列車に乗る。
　食堂車で向かいに座った考古学博士ククック、ルゥルゥと自己紹介する主人公。五億五千万年の生命の歴史。
　リスボン到着、豪華なリベルダーデ通り。優美な車馬が賑やかに往来、その左右には花壇、立像、噴水に飾られた舗道。宮殿のようなホテル。
　ペドロ・クワトロ広場、上品な母娘。ククック教授の住所を尋ねると、笑い出す娘。実はククック夫人と娘ズザンナ、略してズゥズゥ。もう一人の男は助手のフルタード。昼食に招かれるルゥルゥ。
　気高い夫人セニョーラ・マリア・ピアと、可愛いズゥズゥとの両方に惹かれるルゥルゥ。真摯な夫人、はぐらかすズゥズゥ。
　両親に手紙を書くルゥルゥ、国王カルロス一世との謁見。夢見心地のリスボンと褒めちぎり、絵まで褒めるルゥルゥ。
　貴族の嗜み、テニスをやるルゥルゥ。早朝から練習、持ち前の運動神経でなんとかごまかす。
　ひそかにズゥズゥの絵を描き、見せてくれとせがまれるルゥルゥ。
　闘牛見物。ほとんどの女は、髪に高い櫛をさし、黒い紗のマンティーリャを被っている。セニョーラ・マリアの堂々たる民族衣裳に感銘を受けるルゥルゥ。三本の槍を刺されて引き返そうとする牡牛、気品高い婦人までが抗議の口笛を鳴らす。花火で興奮させられた牡牛、一人の闘牛士を撥ねる。英雄リベーイロの登場、計算づくで挑発し、牡牛の突進をかわす。
　翌日、絵を見せるなり、それを引き裂くズゥズゥ。ルゥルゥの胸に顔を埋め、かわいらしい拳で肩を叩く。腕をほどいて接吻、そこにセニョーラ・マリアの登場。
　娘はやがて助手のフルタードと一緒になります。円熟した大人が青年に寄せる好意を、勇気ある青年は拒みなさりますまい。闘牛場で見たように、胸の隆起が激しく波打つセニョーラ。

寸評
　罰金遊びというのは、王様ゲームの原点ですね。ホステスさんが相手でも、断られてしまう場合があるのに、こういうのを女学生に強要する大学教授がいたというのは、不届きな話ですねえ。

トニオ・クレーゲル

　　　福田宏年訳

　学校帰り、一緒に帰る二人の少年。ハンス・ハンゼンは長身、美貌、万能で人気者。かたやトニオ・クレーゲルは夢想家肌。シラーの作品を読めと勧めるトニオ、忘れた訳じゃないとハンス。
　二年後、異性への憧れ。クナーク先生の作法教室、近所の子弟が作法と踊りを習う。そこで一緒になる金髪のインゲ、女の列に入って笑われてしまうトニオ。
　領事である父の死、クレーゲル家の没落。再婚して南方へ嫁ぐ母。生まれた町を離れ、都会や南方をさすらうトニオ。
　女流画家リザヴェータのアトリエを訪ねるトニオ、仕事や同輩の話。
　北へ向けて旅立つ決意、故郷を通って、さらにデンマークへ向かう。
　十三年ぶりの故郷、思ったより小さい町並み。かつての自邸は市民図書館に。
　デンマークへ、星空を見ながらバルチック海を渡る。トールヴァンセンの彫像、ティボリ公園。
　アールスガルトの鄙びた海浜ホテル、女主人と漁師、同宿は三人のアメリカ青年。のんびりした毎日。
　燻製、塩漬、冷肉など、どっさり持ち込まれる食材。ダンス付き遠足の一団がやって来る。寝られたもんじゃないと漁師、気分が変わって良いとトニオ。やって来たのはハンスとインゲ、まったく昔通りの姿。
　遠足帰りの一行、楽団付きでダンス、カルタ。冷たい飲み物とつまみ、トニオに気付かない二人。ハンスの妹と目される黒目勝ちの少女、足を踏み外して倒れ、トニオに介抱される。
　自室に引き取り、リザヴェータに手紙を書くトニオ。

寸評
　なんか、志賀直哉の「大津順吉」と雰囲気が似ていたりして。

トーマス・マン略歴

　1875.6/6、ハンザ都市リューベックに生まれる。父は穀物商、母は独ポルトガルの混血。父は後に、市会議員、副市長まで勤める。兄一、妹二、弟一。
　1892.17才、父死亡、マン家没落。
　1893.18才、高校中退、一家を追ってミュンヒェンへ。火災保険の見習い社員。
　1895.20才、退職、兄に続いて評論活動。
　1896.21から23まで、兄に誘われてイタリア滞在。
　1900.25才、「ブデンブローグ家の人々」
　1905.30才、ミュンヒェン大プリングスハイム教授の娘カタリーナ（カーチャ）と結婚。ほっそり型の知的美人、実家はミュンヒェンの社交界・芸術界の中心をなす富豪。通産、三男三女。
　1910.35才、「詐欺師の告白」　この年より長期執筆。妹カルラ自殺。
　1912.37才、「ヴェニスに死す」
　1924.49才、「魔の山」　ロンドン・ペンクラブから招待。
　1925.50才、ミュンヒェンで誕生記念。
　1926.51才、プロイセン芸術アカデミーに選出、リューベック市七百年祭、パリ・カーネギー財団からの招待。
　1927.52才、妹ユリア自殺。
　1929.54才、ノーベル賞受賞。
　1930.55才、ナチスを警戒して、「理性に訴う」演説。
　1933.58才、ヒトラー政権掌握、ナチス党、マン家を接収。ヘッセ宅に身を寄せ、フランス、やがてスイスへ。
　1935.60才、評論活動盛ん。
　1936.61才、国籍剥奪、財産没収、博士号撤回。
　1937.38.39、欧米で評論活動さかん。
　1940.65才、英ＢＢＣ放送にて、打倒ヒトラーを説くドイツ向け放送開始。
　1942.67才、「ドイツの聴取者諸君」刊行。
　1945.70才、第二次世界大戦終結。
　1947.72才、「ファウスト博士」
　1949.74才、十七年ぶりのドイツ訪問、ゲーテ生誕二百年祭の演説。弟死亡、長男自殺。
　1955.80才、永眠。

寸評
　カーチャ夫人は、たいへんな美人です。チェーホフ夫人、バルザックと恋仲のハニスカ夫人と並べて、三大文学夫人と呼んでも良いくらいです。

　タジオの容姿について、原作ではくどい説明はないんですが、ビスコンティはキャスティングに際して、カーチャ夫人をイメージしたのではないでしょうか。つまり、カーチャ夫人と、主役のビョルン・アンドレセンとは似ている、という事です。線の細い、少年っぽい感じの女性です。ちなみに、胸は薄いです。

　結婚当時のカーチャ夫人

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