ピノキオ

ピノキオの冒険

　　カルロ・コロディ、杉浦明平、岩波書店、1958。

　１、大工のサクランボ親方、空耳に悩まされる。その正体は実は樹、テーブルの脚にしようと、斧を入れたり、鋸を入れたりすると叫ぶ。かんなを掛けると、くすぐったいと笑う。

　２、操り人形の材料を求めて、ゼペット爺さんの訪問。それを冷やかす声、殴り合い、仲直り。爺さんの脛を打つ木切れ、またしても殴り合い。

　３、ゼペットの住む地下室。家具はベッド、机と椅子のみ。ストーブは絵、そこで燃える火も絵、そこに掛かる鍋も絵に描かれたもの。人形の名はピノキオ、縁起の良いピノキオ一族の中でも、一番の大金持ちは乞食をしている。眼を作ると、それが動く。鼻を作ると、それが伸びる。口を作ると笑い、足を作ると蹴る。歩く練習が終わると、表へ逃げ出すピノキオ。腹を抱えて笑う群衆。ピノキオを捕まえるゼペット、群衆はピノキオに同情して、巡査はゼペットを捕まえる。

　４、もの言うコオロギとピノキオとの会話。学校や勉強は嫌だとピノキオ、なら職を付けろとコオロギ。食べて、寝て、朝から晩までぶらぶら暮らすという職業。そんな商売をやる者は、慈善病院か牢屋行き。

　５、空腹を訴えるピノキオ、やっとの思いで卵を手に入れる。料理に取り掛かると、卵が割れて小鳥が飛び立つ。物乞いに出るピノキオ。

　６、嵐の中、物乞いをするピノキオ。窓から水を掛けられる。帰って、火鉢で足を暖めるピノキオ。

　７、ゼペットの帰宅、足が焼けて立てないピノキオ。空腹とショックで、泣く。持っていた梨を与えるゼペット。皮を剥け、芯を取れと駄々をこねるピノキオ。結局、空腹の余り、皮も芯も平らげるピノキオ。

　８、ぼく、今日から良い子になりますとピノキオ。その条件で脚を作るゼペット。学校へ行きたいと言うので、紙の上着をこしらえる。でも、本がない。雪の中、外へ出るゼペット。その手には本が、しかし上着がない。なぜとの問いに、暑かったから売ったとの答え。

　９、学校へ行くピノキオ、勉強して、金を儲ける。そして、父に上等の服をこしらえるとの誓い。遠くから笛や太鼓の音。今日は笛を聞きにいこう、学校はいつでも行けるさ。海岸広場での、操り人形一座。入場料は二十円、上着も帽子も売れない。そこで、本を手放すピノキオ。

　10、人形小屋、舞台ではアルレッキーノとプルチネルラ、ロザウラ。ピノキオを見つけて大騒ぎする人形達。ひらりと飛んで、三等席から舞台に移るピノキオ。みんなに抱かれ、口付けされる。長い髭の人形使い、芝居を壊した事を怒る。羊を焼くには薪が足りない、お前を薪に使うと脅す。ウナギのように崩れるピノキオ。

　11、髭長の親方、ビノキオに同情して許す。その代わり、アルレッキーノを薪にする。ピノキオの嘆願。やむなく、生焼けの羊で我慢する親方。

　12、話を聞き、ゼペットに金貨五枚を持ってやらせる親方。道中、狐と猫のコンビに会うピノキオ。事情を話すと、金貨を倍に増やせ、千倍に増やせと進められる。フクロウの国の奇跡が原に金貨を埋めると、ひと晩で樹が伸びて実がなる。ひとつの樹に五百の実、二千五百の金貨が手に入る。

　13、夕方、宿屋に着く三人。食欲のない猫は、ボラを三十五、病気の狐は、雄鶏を数羽たいらげる。眼が覚めると、つれは二時間前に出掛けたと聞かされるピノキオ。まだ暗い中を出発。コオロギの忠告、一日で金持ちになれる等という連中は、気狂いかペテン師。

　14、父や先生ばかりか、コオロギまでが説教するとピノキオ。頭から袋を被った二人の追い剥ぎに会う。相手は刃物を出すので、噛み付いて逃げるピノキオ。

　15、森の中で白い家を見つけるピノキオ。ルリ色髪の少女は助けてくれず。二人組はピノキオを捕まえて刃物を突き立てるが通らず、縛り首にかけて明日まで放置する。薄れゆく意識の中で、父を思い出すピノキオ。

第二章

　16、ルリ色髪の少女の指示の下、鷹が綱を切り、むく犬がピノキオを運ぶ。医者として、物を言うコオロギが登場。「ここに居る操り人形は、札付きのごろつきで、わんぱくで、ぐうたらで」　眼を覚ましたピノキオ、泣く。

　17、薬を飲ませるルリ色髪の少女。苦けりゃ飲まないと、ピノキオ。角砂糖を先にくれ、砂糖が薬だったら良いのにィ。部屋のドアが半分開いているのが目障りで、とピノキオ。死んでも構わない、薬は飲まないと言うと、棺桶を担いだウサギが登場。慌てて薬を飲むピノキオ。これまでのいきさつを話す。四枚の金貨は無くしたと嘘をつくと、鼻が伸びる。

　18、ルリ色髪の仙女と姉弟の契りを交わすピノキオ。父の下へ帰る。道中、再び、狐と猫の二人に会う。仙女、ゼペット、コオロギの事を思い出すが、やはり奇跡ケ原へ行って、金貨を埋める。

　19、町へ戻って、再び野原へ行くピノキオ。オウムに笑われる。事情を聞いたピノキオ、裁判所へ訴える。ゴリラの裁判官、この気の毒な男を牢屋へ放り込めと判決。戦勝祝いの赦免、一人前の悪党でないと釈放してくれない。一人前の悪党と偽って、牢を出るピノキオ。

　20、仙女の下へ帰るピノキオ、道の真ん中で大蛇に会う。何とか難を逃れ、腹ごなしにブドウ畑に入ると、罠に掛かる。

　21、ホタルに愚痴をこぼすと、ブドウはあんたの物？　と諭されるピノキオ。鶏を取っていたのはお前か、と百姓の質問。今日番犬が死んだから、お前が代わりを勤めろ。小屋で眠るピノキオ。

　22、深夜、イタチの登場。八羽の鶏を盗み、うち一羽を番犬に譲っていた、それでどうだ。承知するピノキオ、イタチが鶏小屋に入った所を見計らって、飼い主を呼ぶ。イタチを捕まえる百姓、ピノキオを自由にしてくれる。

　23、ルリ色髪の仙女の下へ急ぐピノキオ。あの家はなく、代わりに大理石が。「ここにルリ色髪の少女眠る。弟のピノキオに捨てられて、悲しみのあまり」という文句。自分が死んだ方が良かった、と泣き崩れるピノキオ。大きな鳩がゼペット爺さんの消息を知らせる。四ケ月も君を探していたが見つからず、今度は海を渡ろうと小舟をこしらえている。鳩の背に載って出発するピノキオ。一夜目は鳩小屋に泊まり、エンドウ豆を食べる。翌日、海岸に到着すると村の群衆が集まっている。「かわいそうな爺さんが船出したが、海は荒れていて小舟は今にも沈みそう」　あれは父さんだ、と叫ぶピノキオ。ゼペットもピノキオに気付いて、引き返したいんだと合図する。大波に呑まれるゼペット。ピノキオ、海に飛び込む。

　24、孤島に流れ着くピノキオ。波間から顔を出したイルカから、父の消息を聞く。五階建てのビルより大きい、機関車でも呑み込むフカがこの辺を暴れていた。とりあえず働き者の国へ行くピノキオ。石炭屋に一円を乞うと、石炭を運んでくれたら四円やると言われて断る。左官屋に一円を乞うと、石灰を運んでくれたら五円やると言われて断る。最後に水瓶を運ぶ優しい奥さん。食事を餌にビノキオを働かせる。パンとお菓子を平らげたピノキオ、相手がルリ色髪の仙女と判って驚く。

　25、正体を明かしたルリ色髪の仙女、母と呼ぶ事を許す。さらに、勉強や仕事をすれば人間になれると約束する。

　26、学校へ通うピノキオ、みんなのいたずら、反撃。喧嘩をして始めて、学校中の人気を集めるピノキオ。海岸で大きなフカを見たという悪ガキ連、外へ誘う。

　27、フカはどこだと尋ねると、昼飯中だ、昼寝だとからかう腕白ども。七対一の喧嘩、木で出来たピノキオは有利。手にした教科書を投げる腕白ども、ピノキオは体をかわしてそれらは海へ。餌と思って教科書を食べた魚たち、口を歪めて吐き出す。誰かの投げた厚い本をかわすと、それが後ろにいたエウジェニオに当たる。エウジェニオ気絶、巡査に連行されるピノキオ。隙を見て逃走、番犬に追われる。

　28、海に落ちるピノキオと番犬アリドーロ。泳げないアリドーロを助ける。魚と一緒に網に掛かるピノキオ、洞穴に住む漁師に連れられる。油の煮える鍋の傍ら、ボラ、カマス、イナ、ヒラメに小麦粉をまぶす漁師。喋べるピノキオに敬意を表し、調理法を選ばせてやると言う漁師。学校へ行けば良かったと泣くピノキオ、結局、同じように小麦粉をまぶされてしまう。

　29、アリドーロによる救出。道行く老人にエウジェニオの無事を聞き、さらに衣裳代わりに粉袋を貰うピノキオ。仙女の家へ行くと、カタツムリの応対。戸を蹴破った足は動けず、出された食事は塗り物。気を失って目覚めたピノキオ、仙女の解放。以前の成績が良かったので、明日は人間になれる。祝いにコーヒー二百杯とパン四百切れを用意するので友達を招待しなさい。

第三章

　30、仲間を招待するピノキオ、一番の仲良しトウシン小僧を探す。百姓家の門陰で夜を待つトウシン小僧。おもちゃの国へ行く。そこは学校もなければ、勉強もない。木曜は休みで、一週間に六つの木曜がある。夏休みは1/1から12/31まで。間もなく馬車が通るので、それに着いて行く。そこは本当に学校が無いのかとの問いに、影も形もないね。

　31、十二組、二列のロバが引く馬車の登場。丸顔の御者、子供を満載したクルマ。満員なので、かじ棒に乗るトウシン。ピノキオはロバに乗ろうとすると、蹴られる。ロバの耳を噛む御者。出発、何者かの忠告。
　夜明け、おもちゃの国に到着。八つから十四まで。浮かれ、騒ぎ、叫び声で、頭がおかしくなりそう。様々な遊び、仲間入りするピノキオとトウシン。これほど幸福な子供があるか、何という素晴らしい生活。あっという間に五ケ月。

　32、朝、目を覚ましたピノキオ、頭にロバの耳が生えている。それはロバ熱と教えるモルモット。勉強を嫌って、遊びに夢中になる子供は、みんなロバになる。頭布を被ってトウシンを探しに外へ出れば、同じく頭布を被ったトウシンに出会う。ふたり一緒に頭布を取って大笑い。やがて、立ってられなくなって、四つん這い、ロバに変身。

　33、二匹にブラシを掛け、毛並に艶を出して売りに出す御者。百姓に買われたトウシン、サーカス一座に買われたピノキオ。芸を覚えて初舞台、花と帯で飾られて登場。駆けっこの芸と、歓声。客席の中に仙女を見つけて叫ぶが、それはいななきに。輪抜けを失敗して足を傷める。広場でロバを売る団長。買い手は太鼓に使う革が目当て。海岸に連れて行き、首に石を付け、前足を縄で縛り、水中に突き落とす。

　34、五十分後、縄を引くと、ウナギのようにくねくね動く操り人形が登場する。いきさつを話す。仙女さまが魚の大群を寄こされて、それが体を貪る。耳を喰われ、鼻を喰われ、魚の貪欲さに驚くピノキオ。木には歯が立たず、魚はちりぢり。海へ逃げるピノキオ。
　大理石の孤島、ルリ色の小山羊が呼ぶ。泳ぐピノキオを、三列に歯の並んだフカが呑む。気が付くと、あたりは真っ暗。泣いていると、同じくフカに呑まれたマグロが慰めてくれる。このフカの大きさは１km以上。

　35、遠くにちらちら見える灯りを目指して歩くピノキオ。小さいテーブルに、小さい蝋燭、魚を食べるゼペット爺さん。もう絶対に父さんのそばを離れないとピノキオ、わしの眼の見ているのは本当かとゼペット。いきさつを話すピノキオ、お前を認めたが、小舟がひっくり返ってフカに呑まれたとゼペット。その後、難破して呑まれた船から、缶詰、パン、酒、蝋燭などを得た。
　蝋燭を持って胃袋を歩く二人。眠るフカの口から見る夜空は、満天の星と月。ゼペットを背中に乗せて、泳ぐピノキオ。

　36、泳げないゼペット、力尽きるピノキオ。二人とも溺死寸前。こっそり、二人の跡について来たマグロが助けてくれる。牛ほどのマグロ、楽々と二人を陸まで運ぶ。ピノキオのキス。
　道中、物乞いをする狐と猫。かまわず歩くと藁小屋、物言うコオロギにミルクの在りかを尋ねる。
　農夫ジャンジョにミルクを求めると、井戸から水を汲み上げる為の滑車を回してくれと頼まれる。桶に百杯の水を汲んでへとへとのピノキオ。昨日までこの仕事をやっていたロバは瀕死と聞いて会いに行くと、何とトウシン小僧。
　五ケ月、一杯のミルクの為に働き続けるピノキオ。さらに、籠や笊を編んで小銭を儲ける。夜は夜で、読み書きを習う。病身の父を養うのみならず、新しい服を新調する為の、貯金まで蓄えるピノキオ。
　仙女の使いのカタツムリ、主が病気で、金もないと伝える。仙女の為に服を諦めるピノキオ、夜は十二時まで働き、いつも八つ作る籠を倍作る。
　夢に仙女の登場。今までのいたずらを許し、行儀の良い手本になれと諭す。目を覚ましたピノキオ、生身の子供になっている。藁小屋はきれいな家に、立派な家具、新しい服も揃っている。鏡に映る、朗らかな自分の顔。元気なゼペット、新しい額縁を工夫中。これはみんなお前のお陰、悪い子が良い子になると、家の中を変える力がある。前のピノキオはどこと尋ねると、長椅子を指すゼペット。首を傾げ、両腕を垂らし、力なく崩れたかつての操り人形。

作者紹介

　カルロ・コロディ、1826～1890。
　フェレンツェ生まれ、本名ナッロ・ロレンティーニ。イタリア独立戦争に従軍。退役後は、官吏、教師などの職に就く。1881.1/、子供新聞に「操り人形の話」を連載。15章で終わり。好評の為、翌年、29章まで追加。さらに好評の為、終章まで書いて、1883.1/25号で完結。
　戦傷者が巷に溢れ、若年世代に忠孝勤労を説く時代背景がある。北イタリアのコロディ村にはピノキオ公園がある。

　綴り、ＰＩＮＯＣＣＨＩＯ．Ｃｏｌｌｏｄｉ

寸評

　Ｑ、そこは本当に学校がないの？

　Ａ、影も形もないね。

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