石油の世紀

　　ダニエル・ヤーギン、日高義樹、持田直武、1991、日本放送出版、

　1854　ガリシア地方の灯油、ウィーンで販売。
　1855　弁護士ジョージ・ビセル、ペンシルバニアの石油の光源使用を着想、銀行頭取ジェームズ・タウンゼントが資金調達、エール大教授ベンジャミン・シリマンＪｒのお墨付きで投資家殺到。
　偽大佐ドレークの発掘、タイタスビル、オイルリージョンの賑わい、狂乱、ペトロリアム・ポルカ、石油熱のギャロップ。隣のスミスは若くて貧乏、一日10￠も稼げない。それが突然ダンディになって、云々。

　1865.2/　ジョン・Ｄ・ロックフェラー、26才でスタンダード石油を支配。
　重役ヘンリー・フラグラー、後にフロリダ鉄道を建設。
　スタンダード石油、鉄道会社からリベートを受け取る。
　タイドウォーター社、パイプラインを建設。
　記者ヘンリー・デマレスト・ロイド、シカゴ・トリビューン紙でスタンダード糾弾、1881、同氏、アトランティック・マンスリー紙に大独占物語を掲載。
　1882.1/2　スタンダード・トラスト協定、当時、企業による株式保有は違法。よって信託委員会を組織し、スタンダード傘下のすべての株を管理、代わりに株主には信託株が配布。全七十万株のうち、ロックフェラーが二十万、フラグラー六万。
　「暴落は買いのチャンス。市場価格が底値になると、うろたえる人がいるが、そんな事に神経を惑わされず、買う事。もし買わなければ、大変な過ちだ」
　（所感、二番底、三番底というのがあります）

　マンハッタン・ブロードウェイ二六番地、トラスト本部。賢い老フクロウ、人に喋べらせて、自分は喋べらない。古いスーツを好み、好きな食べ物はパンと牛乳。シカゴ大学へ寄付。
　金ぴか時代、泥棒貴族の時代、多くの子供に一台の三輪車しか与えない。同級生が下男を従え、馬車で通学する中、ジュニアは徒歩で通学。父親の別荘で働き、労働者と同じ賃金を貰うジュニア。
　スタンダード石油は無慈悲に競争相手を蹴散らし独占体制を敷いた。しかし、泥棒貴族と呼ばれる当時の悪徳資本家たちの多くが、投機、株と価格の操作、汚職、あるいは株主を騙して富を蓄積したのに対し、ロックフェラーは新しく出来たばかりの、将来の見通しもない事業に飛び込み、それを高度に組織化し、その上に財産を築いたのだ。
　1861、ニュー・ライト、ヨーロッパへの輸出。ペンシルバニア州が灯油の世界需要を満たす。

　ノーベル家、ロスチャイルド家のロシア進出。
　1837、父イマヌエル、発明した水中機雷にロシア軍部が関心、ロシアに軍需工場を作るが破産。次男ルドヴィッヒ、後を継いで軍需工場を復興。三男アルフレッド、ダイナマイトで世界的帝国支配。ルドヴィッヒ、ライフルの銃床の為に長男ロバートをコーカサスに派遣。ロバート、バクーで製油所を建設。後、ルドヴィッヒが経営を握り、産出量はアメリカを凌ぎ、タンカーも発明して、バクーの石油王と呼ばれる。黒い町バクー、町の住民は煙突の中で暮らすよう。
　ロスチャイルド家、バクーから港町バツームへの鉄道建設の担保としてロシアの石油施設を獲得。
　1888、ルドヴィッヒ、57才で急死。弾丸メーカー、ダイナマイト王、死の商人と誤報。考える三男。
　ノーベル、ロスチャイルド、スタンダードの利権争い。海運王レーンは、ロスチャイルドに番頭役としてサムエルを紹介。
　在英ユダヤ人、貝殻細工を商った父マーカス・サムエルと同名の息子サムエル。弟サムエル・サムエルは日本に住み、ふたりで貿易業を営む。路地裏の狭い事務所でシェア拡大策を練る。
　スタンダードは値下げ攻勢でライバルを潰す。一部地域で値下げしても、他の地域で埋め合わせをする。クーデター計画は秘密裏に、広範囲で。
　サムエルのタンカー、スエズ通行許可。アジア販売拠点網広げる。ミュレックス進水。スタンダードの青のブリキ缶に対して、サムエルは赤のブリキ缶で対抗。タンカーすべてに貝の名前、コンチ、クラム、エラックス、コウリー。スエズを通るタンカーの九割がサムエル籍。
　1894.1895　日清戦争、日本の武器調達で儲けるサムエル商会。
　1895.3/14　スタンダード、ロスチャイルド、ノーベル、同盟契約に署名。米7 5、露25で合意。しかし、ロシア政府の反対、スタンダードの値下げ攻勢ですぐに反古。

　1880、オランダ農家の末っ子、アエイルコ・ハンス・ジフルケル、失恋の痛手からスマトラで油田開発。王室の認可でロイヤル・ダッチを名乗る。
　1877、エジソン、電気による照明の研究。1885、25万の電球、1902、1800万に増える。
　馬なし馬車の登場。1895、パリ－ボルドー間の自動車レース。デトロイト、エジソン照明会社の主任技師ヘンリー・フォード、会社を辞めてガソリン車の開発を始める。
　1905、ガソリン車の優位、1906、サンフランシスコ大地震で自動車が救援に大活躍。1900、8000台→1912、90万2000台。

　1895、ピュア石油の台頭。ユニオン石油、カリフォリニア油田の開発。
　1901.1/10　テキサス、スピンドルトップ油田発掘。地価高騰、土地の転売、喧嘩、殺人、売春婦。ボーモント伝説の売春婦、ヘイゼル・ホーク、マートル・ベルビュー、ジェシー・ジョージ。繁盛する占い師、Ｘ線の眼を持つ少年。
　スピンドルトップのジェームズ・ガフィー、シェル石油のサムエルと契約、 1901.6/。職人がドリラー、無作法者が熟練工、雑役夫が未熟練、という新語。
　スタンダードのシェア、1880、90％、1911、60％。
　オハイオ、テキサス、ついでオクラホマで反独占訴訟、カンザスでは州立の製油所を建設。1897、ロックフェラー引退。後継者、ジョン・アーチボルド。
　1894、ロイド著、連邦を脅かす富の力。マクルアズ誌、長身の女性編集長アイダ・ミナーバ・ターベルによる暴露記事の連載。
　マーク・トウェインの庇護、ヘレン・ケラーの学費援助をした第二の実力者、Ｈ・Ｈ・ロジャーズが情報源となる。議員への選挙資金援助、リベート攻勢、ダンピング攻勢、発汗療法による対立業者の取り込み。ターベル著、スタンダード石油の歴史。

　1901、セオドア・ルーズベルト大統領誕生。ズボンをはいた蒸気機関車、家に帰って衣服に染み付いた彼の性格を搾り出さねば、と言われるほど強烈な個性の持ち主。1906、日露戦争の調停でノーベル平和賞受賞。鉄道、精肉、大企業の規制、食品、医薬品の安全性確保。45の反トラスト訴訟、トラスト退治屋。
　1906.11/、スタンダードを起訴。1909.11/、連邦巡回裁判所、政府勝訴の判決、解体命令。1911.5/、最高裁判決、公共の利益に反し、他者の商取引を犯し、市場支配を目論んでいた事は明白。前判決を支持、解体。
　1911.7/、スタンダード解体。
　ニュージャージー・スタンダード→後のエクソン、　ニューヨーク・スタンダード→モービル、　カリフォルニア・スタンダード→シェブロン、　オハイオ・スタンダード→ソハイオ→米ブリティッシュ・ペトロリアム販売、　インディアナ・スタンダード→アモコ、　コンチネンタル石油→コノコ、　アトランティック石油→アルコ→サン石油。　解体後、それぞれの株価は上がり、ロックフェラーの財産は二倍になった。裁判も個人の権利までは奪えなかった。
　インディアナの生産部長ウィリアム・バートン、熱分解法でガソリンの生産量を45％に上昇。博士号を取得していたバートン。高温高圧での実験は、旧スタンダードでは考えられなかったもの。

　1897、サムエル、自前の供給確保の為にボルネオでの油田開発。ケント州治安判事、権威あるギルド眼鏡製造者組合のマイスター就任、座礁した戦艦を救ってナイトの称号授与。ボルネオ難航、中国では義和団。
　1897、ロイヤル・ダッチ、スマトラ油田から塩水。疲れたケスラーに代わり、ヘンリー・デターディングが就任。単純化できない事は間違った事。
　1902.9/29　サムエル、ロンドン市長選任、11/10　就任。しかし内情は火の車、イギリス海軍は相変わらず石炭に固執、減産でテキサスからは供給減。
　1907　ロイヤル・ダッチ・シェル誕生。

　バクー、地下印刷所ニーナ、新聞イスクラ、
　1901,1902　ヨシフ・ジュガシビリ、後のスターリン、ロスチャルド家に対して度々のストライキ。1903　全国的なゼネスト。
　1901　鴨緑江の争い、皇太子時代に暗殺未遂に合ったニコライ二世は反日派。
　1904.1/　旅順への奇襲、日露戦争、革命を加速させた戦争。12/　冬宮を行進する労働者が警官隊に銃撃される、血の日曜日。タタールを扇動する政府、タタール、アルメニア人を虐殺。
　1905.9/ 10/　全国規模の反乱とストライキ、コーカサスでは社会主義より民族主義、タタール対アルメニア、「地獄の底が抜けた、銃弾が耳元をかすめた」油井2/3破壊、見えない太陽、同時に地震、ポーツマス講和。
　議会ドゥーマに、ボルシェビキ代表を選出。1910、スターリン流刑、ロスチャイルド、ロシア利権をシェルに売却。
　ペルシャのキタブギ将軍、採掘者を求めてダーシーを得る。
　1909.4/19　ビルマ石油とスコットランド銀行、アングロ・ペルシャを設立、投資家でごった返す銀行。ダーシー、フィッシャー提督を知る。

　1911　マルボロ公の甥ウィンストン・チャーチル、海軍大臣に就任。フィッシャー提督、ドイツの脅威、石油の優位性を説く。1912からの三年、石炭を駆逐する海軍計画。石油の供給確保が案件となる。
　シェルとアングロの利権争い、親英派であるにも関わらずユダヤ人、オランダ人と責められるサムエルとデターディング、議会でのアングロ・ペルシャの国有化、ユダヤ人いじめと評される。
　1914.6/28　サラエボでフェルディナンド皇太子が暗殺、7/30、ロシア挙兵、 8/1、ドイツ対露開戦、8/4、イギリス対独開戦。第一次世界大戦。
　人と機械との戦い、鉄道輸送よりトラック輸送、
　1914.9/6　パリ陥落寸前、ガリエニ将軍のタクシー部隊、迅速な兵員補給でモルトケを破る。
　塹壕や鉄条網で膠着状態の続く西部戦線、「これは戦争ではない」
　1917　独、ディーゼル潜水艦Ｕボートの出現、ミュレックス沈没。
　1918.8/8　英、タンクの出現、ドイツ陸軍暗黒の日。
　飛行機の使用、イギリス、トルコに対して戦術爆撃、1918.3/、ドイツに対して戦術爆撃、ドイツ、飛行船ツェッペリンと爆撃機による英本土空襲。
　ルーマニア、バクーの油井破壊、1918.10/、ドイツ備蓄石油底つく。 1918.11/11　大戦終結。
　安全保証の為の石油確保、また消費増の為に世界の眼が中東に向けられる。
　カルースト・グルベンキアン、トルコ石油、トルコ国立銀行の大株主。旧トルコ帝国での石油利権を握る。そこで操業するシェル、アングロは合わせて５％の利益を譲渡する。美術収集癖、未成年女性を身辺に付ける。
　大戦中イギリス、メッカ大守フセインを口説き、トルコに対するアラブの反乱を扇動。戦後、トルコ帝国の領地を割譲。三男ファイサルをシリア王に据える。後、シリア支配権はフランスへ、ファイサルを新国家イラク王に据える。兄アブドルはヨルダン王に。
　イラク開発で権利の見直し、レッドライン協定、旧トルコ帝国領に対する権利を守ったグルベンキアン。

　1919.7/7　ドワイト・Ｄ・アイゼンハワー大尉、42台のトラックを連ねて大陸横断の旅。車軸折れ、ファンベルト切断、プラグ故障、ブレーキ破損の連続。 9/6、サンフランシスコ着。35年後、ハイウェイ建設を強力に進める。
　ティーポット・ドーム事件、ワイオミング州にある油田をめぐる汚職。名称は地質構造に由来。安全保障の為の石油保留地、内務長官アルバート・Ｂ・フォール、この管理権を海軍から内務省に移し、賄賂を貰って民間に開発権を与えた。ハーディング政権を揺るがす。ジョン・Ｄ・ロックフェラー・ジュニアによる改革と不正追及。
　地質学に加え、地球物理学の応用での油田開発、重力差を計るねじりばかり、磁力計、ダイナマイトの爆発による反射地震計。カリフォルニア、テキサスでの採掘。

　メキシコ油田開発、
　ベネズエラ開発、97人の私生児を持つゴメス将軍、利権を握る一族ゴメシスタ。シェル、マラカイボ湖畔の開発。
　ボルシェビキ海外貿易人民委員レオニード・クラーシン、西側と交渉。工業力の衰退、インフレ、資本不足、食糧不足でぜひとも外資が欲しいソ連。レーニンの譲歩、バクー、グロズニーの1/4の権利。輸出の目玉。亡命ロシア貴族の財産を買い漁るグルベンキアン。将軍未亡人リディア・パブロワと結婚したデターディング、反共に走る。インドで値下げ攻勢。
　山師コロンバス・ジョイナー、東テキサスでブラック・ジャイアント発掘。商人ハントに権利譲渡、秘書や若い女性を誘惑し続けて晩年を過ごす。石油生産過剰、バレル10￠。
　1933.3/4　フランクリン・ルーズベルト大統領就任、内務長官ハロルド・Ｌ・イキス、転落する事の恐ろしさを学び、石油業界を常に信じないようにした。
　1933.5/5　バレル４￠、過剰生産とヤミ石油とで価格暴落。
　州ごとの割り当て、減産、価格カルテル、輸入関税、バレル１＄で安定。
　民族主義の台頭。
　ペルシャ王、レザ・パーレビ、アングロ・ペルシャとの契約を破棄、その権限を縮小。
　メキシコ、低土層の権利は国家が所有すると主張。ただし外資も欲しい。ラザロ・カルデナス将軍の蜂起、大統領就任。油田の接収。シェル、ニュージャージースタンダードの打撃。賠償額もメキシコ主導。ルーズベルトは善隣外交で関せず。ペトロレオス・メヒカノス、すなわちペメックスの誕生。
　クウェート、養殖真珠で経済崩壊。ホームズ少佐、バーレーンで油田開発。探坑はアングロ・ペルシャ、ガルフ。
　十八世紀初頭に始まるサウジ王朝、トルコの侵略、跡目争い、仇敵ラシード家との確執などで亡命王子イブン・サウドはクウェートのサバハ家に身を寄せる。 1902.1/、21才で蜂起、45才でアラビア半島の盟主として君臨。巡礼がへって財政難。サウド家とサバハ家の旗は勝利も敗北もともにする。
　イギリス商人フィルビー、アラビアの油田開発、サウドの後ろ盾を得る。探坑はソーカル、カソック。

　1931.9/18　満州鉄道の爆破擬装工作、満州事変。ルーズベルト、日本への信頼を力説。大恐慌、鎖国貿易で、資源確保、市場拡大の為の侵略政策を取る日本。 1930.2/、米英との海軍軍縮条約の推進派、浜口雄幸、選挙で大勝。数ケ月後、東京駅で右翼青年に狙撃。
　石油の80％をアメリカ、10％をオランダに頼る日本。対日禁輸措置の議論が高まる。1934.8/　デターディング、ティーグル訪米、石油局長イキスに禁輸を提案。イギリス内閣、対日禁輸措置を了承。しかし、米国務長官コーデル・ハルは対日禁輸を支持しないと明言。議論に終止符。
　1937.7/7　蘆溝橋事件、蒋介石の警告。8/13、日中戦争。ルーズベルト、隔離政策、経済制裁。　注意、日本の侵略が先、対日禁輸は後、ルーズベルトは弱腰。
　1938　中国への攻撃は激しさを増す。この時に至っても、アメリカは日本に武器を輸出していた。国務省、兵器産業に対日輸出を控えるよう要請する手紙を出したに停まる。「日本がパイロットを、アメリカが飛行機、ガソリン、油、爆弾を出して、中国の都市を破壊している」とのパンフレットまで作られる。ギャロップ調査、国民の72％、軍需物資の対日禁輸を支持。
　真剣な討議が続く。駐日大使ジョゼフ・グルー、面子を失えば日本は何をするか判らないと警告。我々が石油の供給を止めれば、日本が東インド諸島に艦隊を差し向けるのは必至。
　日本政府プロパガンダ、ＡＢＣＤ包囲網、米英中蘭が資源供給を断つと小学生にまで宣伝。
　1940.7/19　前日、日本から莫大な石油注文。財務省、陸軍省、対日禁輸声明を出すが、国務省は日本を挑発する事を恐れて、その内容を骨抜きにする。9/26、鉄禁輸を決めるが、石油は除外。三国同盟。ルーズベルト、ハル国務長官、なお石油禁輸に反対。コーデル・ハルの理想、貿易障壁を除き、国際経済体制を築く事で世界平和を実現する。
　1941.5/27　国家非常事態宣言、6/23、イキス対日禁輸勧告、両面戦争を避けたいルーズベルト、7/18、日本のインドシナ侵攻は確実との報告、同月インドシナ占領完了、まだ石油輸出を続けるアメリカ、7/25、在米資産凍結、事実上の対日石油禁輸。
　1941.12/7 07:55　真珠湾攻撃、野村大使が国務省に着いたのはその一時間後。

　1913　フリードリッヒ・ベルギウス、水素添加法の発明、高温高圧の下で石炭に水素を加えると石油が出来る。ユダヤ系企業Ｉ・Ｇ・ファルベン、プラント化。ただし大恐慌で資金不足。1937、ナチスにより国有化。
　スターリングラードでの敗退。
　北アフリカ戦線。機動力を生かしたが、兵站部を延ばし過ぎたロンメル、補給線を突く英モンゴメリー将軍。「燃料不足、たったそれだけの事で大の男が泣き出すのだ」　後ロンメル、ヒトラー暗殺疑惑で自殺、国葬。
　Ｉ・Ｇ・ファルベンによる強制労働、連合軍による合成石油プラント破壊、ソ連ルーマニア侵攻、プロイエスティ油田確保。
　1944.12/16　アルデンヌの森で反撃、バルジ大作戦、失敗。牛でトラックを引くドイツ軍。
　ボルネオ、パリクパパン、シェル従業員の家族引き上げ、製油施設の破壊に手間取り逃げ遅れた従業員75人、生存35人。
　1941.12/25　チェスター・ニミッツ太平洋艦隊司令長官に任命。
　潜水艦攻撃に苦しむ日本の輸送船団。商船のうち86％沈没、９％破損。米海軍の２％の潜水艦が日本船団の55％を撃沈。石油不足、パイロット訓練不足。

　ナチスへの警告を無視され続けたチャーチル、政界復帰。
　シェル社長デターディング、若いドイツ人秘書とナチスに夢中、ソ連に対抗する為に英独同盟を訴える。やがてドイツに移住、戦前に死亡。
　燃料補給をアメリカに頼るイギリス、大西洋供給ライン。対するカール・デーニッツ提督のＵボート部隊。1943、三月だけで108隻撃沈。暗号解読で逆転。
　1942　アメリカ、ゴムとガソリンの配給制、
　1944.6/6　ノルマンディー上陸作戦。
　ジョージ・パットン率いる第三軍、国境近くのヴェルダンまで僅か一ケ月で侵攻、燃料待ちで待機。港町アントワープ近くに駐留するモンゴメリーの第一軍、四十個師団を要求。手持ち燃料をモンゴメリーに渡し、代わりに四十個師団は却下するアイゼンハワー。その間に防衛体制を建て直したドイツ。戦後評、連合軍は100万の戦死者を出したが、その3/4は九月パットン進軍中止後の数。また、この後の八ケ月間に、民間と収容所の死者の数は数百万。

　戦中、在アラビアで働くアメリカの石油関係者は百人に減った。その内のひとり、エベレット・リー・デゴライヤー、数多くの油田を発掘。大富豪、テキサス・インスツルメンス設立、香辛料の歴史、本の収集、雑誌社の救済。
　デゴライヤー、政府使節として中東石油埋蔵量を調査。三千億バレル、世界史上最大の褒美。アメリカ石油支配の終焉。
　アメリカ、安全保障の為の資源保存政策。
　アメリカの親中東政策、イブン・サウドと緊密な関係、アラムコ設立。
　議会の反対で中東進出は見送り、イギリスを通して中東の石油資源を確保するアメリカ。
　ヤルタ会談後、ルーズベルトとイブン・サウド艦上会談、チャーチルとサウドの贈答合戦。
　海軍長官ジェームズ・フォレスタル、対ソ戦略を出した最初の政策立案者のひとり。中東石油への依存を主張。
　戦後の消費増で石油不足、出回る外国石油。
　各国石油会社、中東に進出、レッドライン協定を廃棄しながら権利は守ったグルベンキアン。
　戦後ヨーロッパ、破壊、無秩序、インフレ、テムズ川が凍るほどの寒波、燃料不足、資本不足。マーシャルプランによる復興、資金の二割が石油、石油関連商品に使われた。
　1948.5/14　イスラエル建国。

石油の世紀　下

　　ダニエル・ヤーギン、日高義樹、持田直武、1991、日本放送出版、

　1935、ゴメス死亡、牢獄や亡命から政界に復帰したベネズエラ改革派、民主行動党を結成。1945、民主行動党、青年将校と組んでクーデター、ベタンクール大統領就任。開発相、ホアン・パブロ・ペレス・アルフォンソ。石油会社相手に取り分を増やす。国有化を恐れて言いなりの会社、利益折半。
　米オイルマン、ジャン・ポール・ゲッティ、クウェートとサウジの中立地帯の利権を獲得。五回の結婚、複数女性との馬鹿騒ぎ、タラス夫人への純愛。買い叩き、見切り価格の名人、従業員全員を解雇して雇い直した大恐慌、ロスチャイルド家の資産放出を狙ったオーストリア併合時代。
　サウジアラビア、アメリカの外国税額控除制度を利用。アラムコの納税先をワシントンからリヤドに変える。承認する国務省。
　1950.12/30　サウジアラビア、利益折半協定。国務省次官ジョージ・マギーの理解。「石油利権の確保はアメリカ資産の確保と同じ、恐ろしいのは利権を失う事」　ルイジアナ油田開発、デゴライヤーの娘婿から政界入りしたマギー。サウジによる全面国有化を回避。

　レザ・パーレビ死亡、息子モハメド・レザ・パーレビ政権下のイラン。政情不安で反英感情の高まり。
　1951.4/28　イラン議会、モハメド・モサデグ首相選出。5/1、アングロ・イラニアン全面国有化。前王朝のシャーの子孫、大貴族、民族主義者のモサデグ、反英米感情を煽る。ベルサイユ講和会議で発言の機会を与えられなかった経験あり。 9/25、職員の引き上げ。
　イランを経済封鎖するイギリス、共産化を恐れるアメリカ。粘るモサデグ。ソ連の接近、ジョン・フォスター・ダレス国務長官の警戒。
　チャーチル立案、アメリカ承認によるアジャックス作戦。シャーを担ぎ、モサデグ追放、利権奪回の為の陰謀。シャーの優柔、ザヘディ将軍の弱腰で失敗。バグダッド、ローマへ亡命するシャー。8/18、失敗報告。8/19、ザヘディ将軍の記者会見、シャー支持の国民的行進。ローマ、エクセルシオール・ホテルでの涙の会見、「国民が私を愛してくれている事は判っていた」
　石油各社でコンソーシアムを結成してイランで操業、モサデグ軟禁。

　スエズ危機
　十九世紀、仏フェルディナン・ド・レセップス、スエズ運河開通。64才で20才の女性と結婚、12人の子供を設ける。仏・エジプトの共同開発、後に財政難となったエジプトは利権を英に譲渡。英仏利権となる。
　1952、軍クーデター、ファルーク国王を追放。王はリビエラで苦もなくハーレム暮らし。1954、ガマル・アブドル・ナセル大佐、ナギブ将軍を追放。モサデグに習い、トランジスタ・ラジオで民衆を扇動、数十万の民衆が街頭に飛び出す。アラブの声。半ズボンの水先案内人は植民地時代のシンボル、1968には切れる権利を解消する狙い。ソ連から武器調達。1955、ナセル懐柔策、英米と世銀、アスワン・ハイ・ダム建設。
　米議会、南部出身議員、エジプト綿花を警戒。イスラエル寄り議員、アラブ主義を警戒。上院共和党議員団、チトー、ナセル、援助一本化を要求、ダレス国務長官、チトーを選ぶ。1956.7/19　ダム借款打ち切り、世銀、ナセルの驚愕。
　1956.7/26　スエズ運河の接収。英仏の驚愕、英首相イーデンとダレス国務長官の衝突と混乱。ナセル、緊張緩和の為に映画鑑賞。植民地時代への回帰に手を貸さない、アイゼンハワーの明確な態度。「ナセルはドラマの中でもっと大きくなる」　イーデンとダレスを牽制するアイゼンハワー。
　ラインラント進駐を止められなかった英イーデン、仏ギイ・モレ、ナセルにヒトラーの亡霊を見る。
　1956.10/24　英仏イスラエル首脳を交えてセーブル会談。同日、ソ連、ブダペスト侵攻。10/29、イスラエル、シナイ半島を攻撃。10/30、英仏、最後通告。 10/31、英空軍爆撃。大統領選挙を一週間後に控えたアイゼンハワーの激怒。ダレス、胃癌で入院。ナセル、貨物船を沈めて運河封鎖。イラク発、シリア経由のパイプライン閉鎖。アメリカの援助を当てにするイギリス。供給停止、「この作戦を始めた者が自分で解決すべし、自前の石油でやってくれ」
　11/4、ブダペスト再突入のソ連、英仏を非難、核攻撃も辞さず。米、報復宣言。中東の共産化を避ける為、手を引かざるを得ない英仏ｲｽﾗｴﾙ。西欧、石油供給1/4。 11/下、英仏軍の撤退。後に、なぜ進撃しなかったのかと問うダレス。
　深刻な石油不足、英、石油新税を導入。タクシー値上げ分は「スエズの六ペンス」と呼ばれる。米、石油輸送作戦で危機回避。1956、日本、マンモス・タンカー建造。

　イタリア国営石油ＡＧＩＰのエンリコ・マッティ、家具職人から化学会社の経営、戦時中はミラノでパルチザン、戦後ＡＧＩＰの経営。供給源の確保、七人の魔女(ｾﾌﾞﾝ･ｼｽﾀｰｽﾞ)との戦い、イランと25:75協定。
　日本、サウジと44:56協定。
　1958、ソ連によるアスワン・ハイ・ダム建設。
　1958.7/　ナセル主導、イラク、ハシム王朝に対する軍クーデター。王の首はね、皇太子の手足切断、大臣の遺体はクルマで引き回し。ナセル主義の勝利。

　1948、ベネズエラ、軍クーデター、ヒメネス大佐の独裁。
　1958.1/　軍政の崩壊、民主勢力の連帯、ベタンクール大統領、ペレス・アルフォンソ石油相の復帰。学者肌、質素な生活。メキシコ亡命時代の愛車、英シンガー車、帰国後、ベネズエラの港で二ケ月も放置された為に錆び付いてしまった。石油景気で涌く祖国だが、人の手がゆき届かない。錆びた愛車を庭に置くアルフォンソ、それは怠惰で投げやりな態度などの、石油の富が国にもたらす危険の象徴。
　大西洋戦争の教訓から、陸路のカナダ、メキシコ油田を優遇するアメリカ。交渉先を変えるペレス・アルフォンソ。
　ソ連の参入、増産分を持て余すアメリカ、世界的な原油価格下落。
　1959.4/　カイロ、アラブ石油会議。記者ワンダ・ヤブロンスキー、サウジ石油相アブドル・タリキ、ペレス・アルフォンソの根回しによる紳士協定、利益折半を放棄、60:40協定。ＯＰＥＣへの一歩。　記者ワンダのハーレム評、楽しい女の会、普通の暖かい家庭的な雰囲気、すごい大家族。
　ソ連、値下げとバーター取引。それを買うエンリコ・マッティ。
　1960.8/9　ニュージャージー・スタンダード石油、一方的な値下げ。ワンダの伝えるアラブ民族主義につき、耳を貸さない社長ラズボーン。
　1960.9/10　タリキ、アルフォンソの奔走により、バグダッドで石油輸出国会議。9/14、ＯＰＥＣ石油輸出国機構の結成。テキサス鉄道委員会の国際版。
　1962、サウジ、長男サウド失脚、次男ファイサル国王の誕生。アハマド・ザキ・ヤマニ石油相の任命。タリキ解任、以後評論家として生きる。エコロジーに眼を向けるアルフォンソ。

　1956、仏植民地下のアルジェリアでサハラ油田の開発。
　1959-61、北アフリカ戦場跡のリビア、良質の油田開発。
　石油生産競争、イランとサウジアラビアの対立激化。
　米議会、輸入制限を要求。アイゼンハワー、自主規制、輸入関税案を経て、輸入割り当て制にしぶしぶ同意。獲得競争、文言解釈、抜け穴探し、陳情の殺到で「行政の悪夢」と呼ばれる。国内石油の保護は達成。
　1948から1972にかけての一日の石油消費、アメリカ、580万バレルから1640万バレルへ、３倍。ヨーロッパ、97万から1410万バレルへ、15倍。日本、３万から 440万バレルへ、137倍。プラスチック加工、炭鉱ストライキの増加、ロンドンの殺人霧、石炭から石油へ。
　大きい事は良い事だ、ガソリン・スタンドのサービス合戦。持て囃される長いテイル・フィンのクルマ、大型エンジン、クロム塗装、１ガロンで８マイルしか走らない。　1954、シカゴ郊外にマクドナルド一号店、1956、州間高速道路法案、クランペット一家の成功を描いたＴＶ「ビバリーヒルズ・ビリーズ」

　第三次中東戦争、六日戦争
　1967.5/　ナセル、シナイ半島に進出。　6/4、エジプト、ヨルダン、イラク軍事協定。　6/5、イスラエル空軍の先制攻撃。　6/8、イスラエル、スエズ東岸を占領。エジプト軍、80％損失。停戦協定、シナイ半島、エルサレム全域、ゴラン高原を収めるイスラエル。
　6/6、アラブ諸国、イスラエル友好国への石油禁輸、サウジ、クウェート、イラク、リビア、アルジェリア、英米への石油禁輸。ナセルの扇動による民衆蜂起を恐れての事。

　7/上、ナイジェリア内戦、東部ビアフラ独立宣言。
　米、非常事態の脅威が存在する動議、発令。タンカー輸送、アメリカ、ベネズエラ、イラン、インドネシア増産。七月、石油供給は安定、アラブ諸国の敗北。
　Ｅ・Ｆ・シューマッハの予言、イギリス石炭委員会の顧問として、石油資源の有限性を警告。容れられず。

　1969.9/1　リビア、軍クーデター、イドリス体制を倒す。ムアンマル・アル・カダフィ大佐、予定より四日早めて上官に先手を取った。ナセル、革命の哲学、アラブの声の信奉者。革命評議会、基地の接収、教会の閉鎖、外人追放、スエズ閉鎖も手伝って有利な条件で再交渉。
　1970.11/　イラン、55％獲得、ベネズエラ、60％獲得。カダフィに対抗心剥き出しのシャー。
　1971.10/　ペルセポリス、ペルシヤ建国2500年祭。
　紅海の角、アデン港、マルクス主義国家の南イエメンにより吸収。
　1971.11/　アラブ首長国連邦成立、英軍撤退。中東、安全保障の真空地帯となる。

　アラスカ、ノース・スロップ地方、プルドー・ベイの油田開発。独立系リッチフィールド、アトランティックと合併。後のＡＲＣＯ、社長ロバート・Ｏ・アンダーソン、知的な山師。ＢＰ、シンクレアの掘った六本は空。
　1967.12/26　地響き、ジェット機四台分の天然ガスの唸り声。アラスカの巨象、推定百億バレル、東テキサス油田の1.5倍。
　過酷な環境、働ける土地ではない。ツンドラ、－65度以下の冬、地下数ｆまで岩のように固く、夏は一転、湿原となる。永久凍土は千ｆまで。

　第四次中東戦争
　1970、エジプト、アンワール・サダト大統領就任。シリア、ハーフェズ・アル・アサド大統領と極秘計画。
　1973.6/　加州サンクレメンテ、ニクソン・ブレジネフ首脳会談。深夜、武器供与を知るブレジネフ、中東は爆発寸前との警告。ニクソン、キッシンジャーは無視。
　1973.4/23　サダト、サウジを訪問。10/5、ソ連、中東から駐在員引き上げ。
　1973.10/6　222機のエジプト空軍機、スエズ東岸とシナイ半島を攻撃。シリア空軍、イスラエル国境北部を攻撃。

　1973.10/8　ウィーン、ＯＰＥＣ会議。交渉決裂。スポット価格の急騰。　10/16、クウェート・シティ、石油相会議。　10/20、サウジ禁輸宣言。同日、ウォーターゲート事件を巡ってコックス議員の罷免。　10/21、米ソによる和平案、協力なくばソ連介入。　10/25、米、核警戒態勢。　10/27、エ・イ直接会談。　1973、
石油パニック。　10/16、イラン石油バレル５＄、11/、ナイジェリア16 ＄、12/中、イラン17＄。シューマッハ復権、著「小さい事は美しい」
　ドイツ、割り当て不安。日本、トイレット・ペーパー買い占め。アメリカ、ガスライン＝ガソリン・スタンドの行列。
　欧州は友好国、蘭・日は非友好と烙印を押すＯＰＥＣ。　11/22、日本、アラブ寄り立場表明。

　12/下、テヘランＯＰＥＣ会議、親切と寛容から、11.65＄。
　キッシンジャー、シャトル外交　1974.1/中、イ・エ兵力引き離し協定。　5/末、
イ・シリア兵力引き離し協定。
　3/18、サダトの理解、ＯＰＥＣ禁輸解除。　6/、ニクソン、イスラエル、エジプト、シリア、サウジ歴訪。
　産油国の石油収入、1972、230億＄→1977、1400億＄。工業化、施設作り、助成金、各種サービス、必需品、贅沢品、武器、浪費、堕落。　先進国、資源のない発展途上国の不況。　1965、眩しすぎるウィーンＯＰＥＣ本部。
　70年代、世界の中心となるＯＰＥＣ。西側の税収が産油国収入を上回るという主張、長期利益をめざすサウジと、短期利益をめざすそれ以外の国。　ヤマニ石油相の活躍、じっと見つめる眼、長く冷静で説得力にとむ話術。
　1975.3/　ファイサル国王、甥の手で暗殺。異母弟ハリド暫定王、異母弟ファハド皇太子として擁立。ヤマニ石油相継続。値上げを警戒するサウジ。
　1975.10/　米ソ、バレル＆ブッシェル(小麦)取引、価格折り合わず座礁。
　中東安全保障の二本柱として、イラン、サウジに武器輸出をするアメリカ。特にソ連と国境を接するイランは重要。キッシンジャー評「サウジはプシー・キャット(ニャンニャン)みたいなものだが、シャーとなら地政学の話ができる」さすが、女を舐めた発言。
　1976、ベネズエラ石油会社、国有化。クウェートのガルフ、サウジのアラムコも利権を失い、単なる操業者、請負業者となる。
　1977.11/　ワシントン、カーター・パーレビ会談、催涙弾で涙の対面。

　70年代、日本の省エネ、半袖の流行、エアコン、エレベーター使用禁止。エネルギー集約型から知識集約型産業への転換。仏ポンピドー、核燃料開発、摂氏20 度以上の抜き打ち検査、罰金、広告禁止令。
　1977、アラスカ・パイプライン完成。ペメックス増産。

　北海油田の開発
　1969.11/　フィリップス社、33番目に掘り当てる。黄金色の油。　1970、ＢＰ開発。　1971、シェル・エクソン共同開発。　変転する天候、時速70マイルの風、高さ50ｆの波。泥と流砂の海底上のプラットフォーム。百年に一度の時速130マイルの風、90ｆの高波に耐える強度。
　1975.6/18　テムズ川上での式典。ウィルソン首相、「十年後には、ＯＰＥＣ議長になっているかも知れない」

イラン革命
　1962、シーア派長老、ルホラ・ホメイニ師、イラクへ亡命。　秘密警察サバク、残虐、性急で、拷問は熾烈、無慈悲、軽薄、傲慢。
　70年代、急激な収入増で混乱するイラン。途方もない近代化投資、浪費と堕落、都市への人口流入、農業不振、食糧輸入、物価高騰、テヘラン市民は家賃が収入の70％。鉄道麻痺、道路渋滞、頻発する停電。
　1977、暮れ、ホメイニ長男殺害。
　1978.1/7　テヘランの新聞、ホメイニを誹謗する記事。聖都クムで暴動。
　カーター人権外交、ＣＩＡ弱体化、イラン長期安定予測。
　イラク、クルド人虐殺、黙認するパーレビ。代わりにホメイニ追放。ホメイニの怒りを買うイラク。
　8/、映画館で五百人焼死。パーレビ白血病。
　10/、パリのホメイニ師、報道陣の前で論陣。全国スト。
　12/、シャー退位を求める大規模デモ、「独裁者なら人民を虐殺して地位を守るが、国王はそんな真似はできない」
　1979.2/1　ホメイニ、テヘランへ。　2/16　パーレビ、エジプトへ。民衆の歓喜、ワイパーの間で動くホメイニ師の写真。

　1979、第二次オイル・ショック、イランの不足は全体の５％、増産で補える量だが、石油各社、消費者がともに買い溜めに走った為に原油価格高騰。バレル13 →34＄。スタンド前に長蛇の列、再び。
　東京、銀座のネオン照明落とす。商社の買い攻勢。
　ＯＰＥＣ、ロッテルダム＝スポット市場に高値販売。
　1979.3/26　サダト、キャンプ・デービッド和平協定。　3/28、スリーマイル島放射線漏れ。
　10/23、エジプト、モロッコ、バハマ、メキシコを追われたパーレビ、ニューヨーク着、入院。米国の陰謀を警戒するイラン国民。
　11/4、在テヘラン米国大使館占拠。　12/、ソ連、アフガン侵攻。
　1980.4/　空母ニミッツからのデザート・ワン作戦、失敗。
　7/、パーレビ、エジプトで死亡。

　9/22、イラク戦闘機数十、イラン領内を攻撃。イラン・イラク戦争。シーア派とバース党の積年の対立、輸出港がほしいイラク。イランの石油施設破壊。
　バース党、ナセル主義のサダム・フセイン、奇襲、陰謀渦巻くティクリート出身。反対派を虐殺したビデオ、出回る。
　ホメイニ、戦争で基盤固め、反対派の懐柔、非聖職者の追放、イスラム原理主義の推進が容易。ひつぎを担いで前線に出る若者、地雷原に突撃する数千の少年部隊。
　石油各社、買いに殺到して価格上昇を招くより、在庫放出で危機を乗り切る合意。大量の在庫を抱えた1979オイル・ショック、その教訓。　12/、先進国エネルギー会議、日本商社の買いを牽制するＥＣ。　在庫放出とＯＰＥＣ諸国の増産でだぶつく石油、バレル34＄。
　メキシコ、アラスカ、北海の油田開発。ソ連、中国の輸出。供給過剰、スポット価格の下落。
　1982.8/　サウジ、ファハド国王就任。石油、財務に明るい王。
　北海、バレル30＄。　1983.3/、ロンドンＯＰＥＣ会議、バレル29＄。
　1983.3/30　マンハッタン貿易センタービル８Ｆ、ニューヨーク商品取引所、原油先物取引を開始。スポット市場は全体の一割から五割へ。
　ビーン・ピケンズ、油田開発より会社買収、対資産比率で割安株を標的にする。
　ゲッティ石油、淡泊な一族、テキサコに売却。
　メキシコ、原油安、高金利、通貨高、政府支出増大、輸出減。1982、840億＄の債務。ヘスズ・シルバ・ヘルソグ蔵相の奔走。
　1982.8/12　メキシコ破産確定、米大手銀行九行、対メキシコ融資44％。　8/13、ヘルソグ渡米。数十億＄借款、信用供与、戦略備蓄用石油の購入を取り付ける。米財務省、一億＄の手数料取り下げ。借りつなぎ、事実上のデフォルト宣言。
　米ペン・スクエアー銀行、石油開発融資の焦げ付きで負債20億＄、倒産。
　1983.12/　アラスカ、ムクルク油田、空井戸、20億＄が不意。
　1984、コンチネンタル・イリノイ銀行、倒産。新資本55億＄、緊急融資80億＄で一時国有化。

　ガルフ買収劇、クリーン経営で知られるガルフ、70年代の会長はミスター・クリーン、ボーイ・スカウトと仇名される。重役に修道女が就任。非効率で優柔不断、株主軽視の官僚体質。ピケンズ、ＡＲＣＯを巻き込み、最終的にシェブロン傘下に。ピケンズの功績、無能な経営陣がありもしない栄光を求めて金を無駄にするのを阻む事ができた。
　ピケンズ、アイカーンを味方に付け、フィリップス、ユノカル攻勢。テーマは株主の利益。ＡＲＣＯ、自社株買い、雇用を配慮。シェル、子会社株31％を57億＄で買い戻し。ＢＰ、オハイオと提携。すべて買収、空売りを寄せ付けない為の、経営基盤の強化。
　1985、ボン・サミット、保護主義、ドルレート、エネルギーは議題にならず。
　1985.6/、需給調整役を担うサウジ、協定価格を守り他国にシェア奪われる。価格防衛から生産防衛への転換。精製業者の利益を確保して、それ以外を取り分とする。　11/、ＯＰＥＣ価格防衛を放棄。
　バレル31＄→６＄。量は変わらず。追加生産は全体の３％、市場シェア争いでの暴落。ネットバック取引、スポット取引、バーター取引。
　1989、ジョージ・ブッシュ大統領就任。東部出身、父はﾌﾞﾗｳﾝ･ﾌﾞﾗｻﾞｰｽﾞ･ﾊﾘﾏﾝ銀行の共同経営者にしてコネチカット上院議員。ウォール街に就職せずテキサスへ、掘削リグのセールス、調達。カクタス・アイビー連合のひとり、ミッドランドでサパタ石油を創業。海底採掘に専念して成功、上院議員、国連大使、中国公使、共和党委員長、ＣＩＡ長官、副大統領。
　1986、バレル９＄時に、副大統領として中東を訪問。穏健諸国への支持、原油価格の安定を訴える。輸入関税か、ＯＰＥＣの結束しか手段はない。
　政府の無理解、ワシントン・ポストだけがブッシュを支持。
　ペンシルバニアの石油史、この業界の不安定さを学ぶベネズエラ幹部アリリオ・パーラ。ジョン・イセ著「アメリカの石油政策」　ただ同然の石油を売る業者はハラキリを演じている。
　1986.5/　ターイフＯＰＥＣ会議、バレル18＄。安すぎる原油は代替エネルギー開発意欲を削ぎ、貿易黒字を招くと、日本もこれを支持。
　9/、ハーバード創立350周年、チャールズ皇太子、ヤマニ石油相の演説。

　イラン有利、イラク最南端ファオ半島を占領。アメリカ、極秘にイランへ武器輸出。クウェート、米ソ両国へ安全保障要求、米、率先してペルシヤ湾警備。武器禁輸、牽制。化学兵器で盛り返すイラク。イラン後継、ラフサンジャニ師。
　1988.7/　米駆逐艦ヴィンセンズ、乗客290人の乗るイラン民間機をタイミングよく誤爆。7/17、イラン休戦通告。8/20、停戦。

　1990.8/2 AM02:00　イラク、クウェート侵攻。
　ブッシュ大統領、個人的に培ってきた関係を生かしてアラブ諸国と連携。素晴らしい外交成果。ソ連、イラクから離反。ＯＰＥＣ増産。国連軍、派遣。石油が武器にならない現実。

　巻外。
　2000.後半、ニューヨーク先物市場による原油価格高騰。ＯＰＥＣ、四度の増産するも高騰やまず。ＯＰＥＣ希望、22～26＄、高値36＄。
　2001.9/11、ツインタワー・テロ。米、アフガン侵攻。
　2002.7/13、ロシア、アメリカに原油輸出。価格よりも安定供給が魅力、サウジに次いで二番目の輸出国となる。
　2003.3/20、アメリカvsイラク戦争。
　2005.8/15、イスラエル･シャロン政権、ガザ地区からのユダヤ住民強制退去。

寸評
　喰えねえ。

book