赤シャツの英雄ガリバルディ

　　藤澤房俊、洋泉社、1987。

はじめに

　原作ランペドゥサ、監督ビスコンティ「山猫」　血気盛んなタンクレディ、千人隊としてパレルモ戦に参加し、眼を負傷して手柄話を語る。
　十九世紀のイタリア独立統一運動を、リソルジメント運動と呼ぶ。
　ガリバルディの戦績、53戦34勝15敗４引き分け。
　その精神は遠く日本にも伝播。
　三宅雪嶺、ガリバルディと西郷高盛の比較論。
　中江兆民、ガリバルディがヨーロッパにロマンチックなパトスを撒き散らしたと指摘。
　与謝野鉄幹「人を恋ふる歌」　妻子をわすれ家を捨て、義のため恥を忍ぶとや、遠くのがれて腕を摩す、ガリバルヂーやいま如何。

　ガリバルディの顔をキリストに模した絵や版画は生前から出回っていた。

第一章　革命家の出立

　1807.7/4、ジュゼッペ・ガリバルディ誕生。父はドメニコ、母はローザ。三男。父は小船を操業する貿易商人、母は信仰深い。多くの親戚と同居。国境の町ニースは、つねに動揺していた。
　数人の仲間と小船を操り、ジェノヴァへ行き、そこからトルコへ渡る計画を立てた少年時代。しかし、父親の船で連れ戻された。
　十四才、船員登録。
　十五才、初の遠洋航海。乗員十名、二百トンの帆船、ワイン、コルク、オリーヴ油をオデッサまで搬送、帰りは小麦を積む。
　1825、聖年で賑わうローマにワインの搬送、テヴェレ河の渇水により搬送困難。引き船料を巡りトラブル。ローマ見物。
　ジブラルタル、カナリア諸島、エーゲ海まで足を伸ばす。
　1827、海賊に襲われること三度。身ぐるみ剥がれる。
　1831、海賊相手に戦闘して負傷。
　ギリシア解放戦争、英露仏vsトルコ。商業活動の不振。
　1933.3/、十三名のフランス事をマルセイユからコンスタンチノープルまで搬送。サン・シモン主義者、家族制度、結婚制度の廃止、自由恋愛を主張して追放された人々。その中に、教授エミール・バローがいた。23日の航海中、サン・シモン主義についてバローと語るガリバルディ。その急進性には反発しながらも、「専制者と闘うあらゆる人民に血と剣を捧げる」という言葉に感銘を受ける。またサン・シモンの著書「新キリスト教」を贈与される。
　1833.6/、露タガンログに寄港。穀物の積み出し港、様々な国籍の人間で活況を呈する港町。ある居酒屋で、祖国の統一・独立について熱心に語るイタリア人と出会う。ジャンバチィスタ・クオーネと推定。マッティーニの信奉者。

　ジュゼッペ・マッティーニの略歴。
　1827、大学在学中、炭焼党カルボネリアに入党。イタリア統一・独立を目的としながらも、神秘的な入会儀式、厳密な階級制度を持つ秘密結社。
　1830、サルデーニャ王国、マッティーニを逮捕。幽閉か追放かの二択で追放を選び、以降、生涯を亡命者として過ごす。
　1931、青年イタリアを結成。共和主義、手段として蜂起を重視。入団が容易で、組織を拡大。沖仲士や船員もいるが、その大部分は中産階級。
　1833.8/17、ガリバルディ、マッツィーニに会うべくマルセイユを訪問。しかし、マッツィーニは既にジュネーヴに移動。
　ガリバルディ、海軍に入隊、同時に青年イタリアに接近、シンパ活動。
　マッツィーニ、サヴォイア侵入、ジェニヴァ蜂起を計画。
　1834.2/4、サヴォイア遠征失敗。ジェノヴァ蜂起の舞台となるサルザーナ広場で待ちぼうけを喰うガリバルディ。
　2/5、宿を出て逮捕を免れるガリバルディ、しかし、海軍からは脱走兵と見なされる。
　4/15、ガリバルディ、青年イタリアに正式参加。
　6/3、ジェノヴァ軍法会議、ガリバルディを国家反逆罪で死刑判決。マルセイユの新聞でそれを知るガリバルディ。
　青年イタリアの基本原理。人類への抑圧、迫害、不平等の存在する所では、それに抵抗し、打破する為に戦う。抑圧者に対して非抑圧者を助ける事が、あらゆる人間の義務であり権利。徳は行動である。
　夏、週末を港で過ごそうとしたガリバルディ、盛装する。溺れた子供を助ける為、盛装のまま海に飛び込んだ。
　南米行きの直前、コレラ禍のマルセイユで十五日間働く。
　1835.9/、リオ・デ・ジャネイロへ出発。

第二章　パンパスの英雄

　1835.11/、リオ・デ・ジャネイロ着。人口十七万、うち五万はヨーロッパからの移民。リオ、ブエノスアイレス、モンテビデオにも青年イタリアの機関誌が持ち込まれている。
　ガリバルディ、青年イタリアのリオ支部開設。しかし、三十人を越えず。ガリバルディ、フリーメーソンに加入。その神秘主義に辟易。
　1836.9/、ルイージ・ロセッティとともに、小船でスパゲッティを売る商売を始める。不振。
　同時期、ブラジル最南端リオ・グランデ・ド・スル独立宣言。初代大統領ベント・ゴンザレス・ダ・シルヴァ。軍事参謀リヴィオ・ザムベッカーリ。ザムベッカーリは1821ピエモンテ革命に失敗した亡命者。
　ガリバルディ、ロセッティ、獄中のザムベッカーリを訪問。私掠船でリオ・グランデの為に働く用意がある事を伝える。
　1837.5/4、マッティーニ号の船出。古い銃を装備した小さな漁船、同士は十二名。ブラジル籍船を襲い、そこで働かされていた黒人奴隷を解放する。
　1838.1/、襲撃に失敗、ブラジル海軍により投獄、拷問。釈放されて後は、リオ・グランデ共和国の正規軍兵士として陸上で戦う。
　主戦場となるサンタ・カタリナ州で、アニータと出会う。アニータは既婚、かなり年長の軍人の夫を持つが、事実上の寡婦。
　1840.9/16、長男メノッティ誕生。
　1841.6/、ガリバルディ、戦線離脱。イタリア移民に数学や歴史を教える。
　1842.3/26、前夫の死亡を知って、モンテビデオの教会で正式に結婚。
　同年、ウルグアイ・アルゼンチン紛争。アルゼンチン領サンタ・フェ州、コリエンテス州、独立宣言。
　6/、ウルグアイ政府、この二州を自国に併合する任務をガリバルディに依頼。
　ガリバルディ、大砲二十門、兵士510人を載せた三隻の船を指揮して出航。アルゼンチン艦隊に追跡されるも濃霧で逃れる。再び沿岸で追い付かれ、船を焼き捨て、敵陣を横断して逃亡。
　12/16、ガリバルディ、首都モンテビデオに帰還。アルゼンチン海軍の包囲網。
　1843.4/、ウルグアイ政府、ヨーロッパ移民による国別の義勇兵を組織。ガリバルディ、ウルグアイ海軍の司令官に任命される。イタリア人義勇兵部隊の制服は、赤シャツと定められる。これは、屠殺場の作業員の制服を流用したもの。
　1845.夏、モンテビデオ、兵糧攻め、忍耐の限界。英仏、ブエノスアイレス封鎖、講和を提唱。
　1846.2/、モンテビデオの北西400kmのサルト遠征。ガリバルディ指揮の下、僅か200名のイタリア義勇兵により、1500を越す騎馬隊、銃士隊に対して圧勝。勝因は、野戦を避け、山岳地帯を戦場に選んだ事。この勝利はヨーロッパにまで伝わる。
　勝利後、アルゼンチン支配下の町を略奪する部隊。途中、かつてブラジル軍人として自分に拷問を加えた者を捕まえたが、復讐はしなかったガリバルディ。
　9/、ウルグアイ政府、ガリバルディに共和国勲功章を授与。さらに、ヨーロッパ義勇兵に対し、ウルグアイで最も肥沃な土地1500km平米と25000頭の家畜を贈与。これに対しガリバルディ、「すべての義勇兵は、圧政者が出現するところはどこでも、国や人民の区別なしに、自由のために戦う事があらゆる自由な人間の義務と確信している。それは、自由が人類の財産であるからである」と述べて、その申し出を断る。富や名誉の為に戦うのではないという、この禁欲的なまでの理想主義。これが、ガリバルディを民衆の英雄にした大きな要素。
　1851.10/8、モンテビデオ攻略、勝敗もつかぬまま講和締結。大デュマ、この戦争に取材し、「モンテビデオ、あるいは新たなるトロヤ」を出版。当時、デュマはまだガリバルディを知らなかった。その足跡だけさえもが、すでに伝説になった。
　勝利の後、嫉妬、政争、軋轢が嫌になり、将軍の地位を返上して帰国を決意するガリバルディ。南米での勝利は、増幅されてヨーロッパに伝わる。
　1846.6/、自由主義者ピウス九世の教皇就任。

第三章　イタリアの一八四八年革命

　1848.4/15、在モンテビデオのイタリア人から集めた募金で、希望号を購入。ヨーロッパへ帰る。同行する義勇兵は六四名。ウルグアイ人、黒人アグイアールも含む。
　同時期、シチリア島パレルモ革命、パリ二月革命とルイ・フィリップ体制の崩壊、ウィーン体制の瓦解とメッテルニヒの逃亡、ミラノ蜂起＝ミラノの五日間。
　故国サルディニア、オーストリアと交戦。かつての死刑宣告は無効と判断してニースに向かうガリバルディ。
　6/21、ニース到着、熱烈な歓迎。ガリバルディ「私は王の為に自分の血のすべてを流す覚悟があります」
　義勇兵は150に、ただちにジェノヴァへ出港。
　マントヴァ近郊ロヴェルベルラでカルロ・アルベルト王と十万の軍に接見。温厚な王だが、正規軍への参入は許されず、ミラノの臨時政府へ向かうガリバルディ。
　7/、ガリバルディ、ロンドン亡命から帰ったマッツィーニとの初会見。サルディニア王家との連携は不可能とするマッツィーニとの見解の齟齬。ガリバルディは相手を、重大な局面で誤った判断を下す現実感覚のない空想家理論家と見なし、マッツィーニは相手を、王家に利用されているお人好しと見なした。
　ミラノ臨時政府、ガリバルディに3000の兵を率いてベルガモ駐留を指示。
　7/24、カルロ・アルベルト王、クストーザにてラデツキー将軍率いるオーストリア軍に攻撃、敗退、ミラノに撤退。ミラノ臨時政府、首都防衛の為にガリバルディを呼び戻すも間に合わず、オーストリアに降伏。
　徹底抗戦を望むガリバルディ、コモ湖に向かう。道中でマッツィーニに合流。コモ湖周辺の山中で戦うガリバルディに対して、そこからスイスに逃げるマッツィーニ。その行動は、義勇兵の多くをも巻き込んだ。
　8/13、カステルレットに司令本部を置いたガリバルディ、カルロ・アルベルトの休戦公定を聞いて失望。「イタリア人に告ぐ」という条文で王を非難。相次ぐ敗北に落胆するイタリア人に勇気を与える。
　続く十五日間、マジョーレ湖周辺の山岳地帯でオーストリア軍相手にゲリラ戦。貴族の別荘が立ち並ぶ湖で義勇兵の搬送。機動力を活かした緒戦は有利。8/26、反動的なモラツォーニ村でオーストリア軍の包囲を受ける。やっとの事でスイス国境まで逃走、随行は70名。9/10、ニース着。
　ジェノヴァに居を移すガリバルディ。戦闘の為に議会活動は不可としながらも、ザルディニア王国議会議員に当選。
　10/21、シチリア人パオロ・ファブリッツィの訪問。シチリア人を助けてくれとの要請。/24、72名を率いて出発。
　/25、リヴォルノ寄港、将軍になれとの強い要請を受ける。
　11/3、ヴェネツィア行きを決意してフェレンツェに到着。アペニン越えをした所で、赴任先をボローニャに変更。
　/9、ボローニャ着、ラヴェンナ進軍。蜂起寸前のラヴェンナ。
　/15、ローマ教会国家首相ペレグリーノ・ロッシ暗殺。
　/24、ピウス九世、変装して脱出、ガエータ着。自由主義の仮面をかなぐり捨て、反動の権化となる法皇。
　ガリバルディ、ローマ新政府防衛の為、ローマ進軍を決意。
　1849.1/、ガリバルディ、ローマ国境内マチェラータに駐屯。破門をちらつかせた選挙妨害はありながら、ローマ立憲議会議員となるガリバルディ。
　2/5、ローマ立憲議会。2/9、圧倒的賛成多数で、ローマ共和国の樹立、教皇の俗権の失墜を可決。
　ガリバルディ、リエーティに滞在。ローマ共和国義勇兵を組織。

第四章　ローマ共和国の防衛

　1849.3/12、サルディニア、オーストリア再戦。
　3/23、サルディニア、敗北、休戦。カルロ・アルベルト亡命、皇太子即位。
　ピウス九世、オーストリア、スペイン、フランス、シチリア諸国に対し、教皇領の共同占有を呼び掛ける。
　シチリア王フェルディナンド、オーストリアとともにローマ国境に軍を結集。
　4/22、フランス、国内カトリックの人気取りの為に、ローマに進軍。
　2/21、ローマ立憲議会、マッツィーニの招聘。3/5、マッツィーニ着。
　3/29、ローマ秘密議会、三頭執政官制度を採択。マッツィーニ、アルメッリーニ、サッフィを選出。事実上はマッツィーニの独裁であり、ローマを中心にイタリアの独立統一を勝ち取る戦略。
　オーストリア軍、フェラーラ占領。
　4/24、フランス軍12000、イタリア上陸。
　4/27、ガリバルディを先頭とする赤シャツ隊千人、ローマ入城。市中にバリケード、女性は救護班を組織。
　4/30正午、バチカン北部をフランス軍4000が行進、それに砲撃を加えるガリバルディ部隊。壮絶な白兵戦の後、負傷しつつもガリバルディ勝利。
　追撃を提案するガリバルディ、それを停めるマッツィーニ。マッツィーニに取ってフランスは革命の祖国であり、第二共和制下のフランスがローマ共和国の敵である筈がないと考える。
　フランス休戦協定。特命大使は若き日の外交官フェルディナンド・ド・レセップス。
　ポーランド、ポルトガル、ハンガリー、プロイセンからも義勇兵がローマに結集する。
　ローマ南方50kmにはフェルディナンド王指揮下のシチリア軍11000が駐屯。
　5/4、ガリバルディ、義勇兵大学生2300を率いて南征。5/9、パレストリーナにて勝利。5/19、ヴェレートリでも勝利。
　6/1、フランス、休戦協定を破棄。兵力三万。対するローマ、八千。6/2、フランス軍、ローマ近郊の二つの丘を占拠。
　6/3、早朝、ジャニコロ丘の争奪戦。ガリバルディ、銃弾でポンチョに無数の穴があくほどの奮戦。それでも、ローマ劣勢。長期戦、フランスの塹壕戦。
　6/21、ガリバルディ、フランス両軍、サン・パンクラツィオ門にて激しい肉弾戦。
　6/26、司令部に妻アニータの突然の訪問。しかし、その五分後には砲撃。
　6/30、早朝、フランス軍の全面攻撃。アウレリア門の防衛、死力戦。副官アグイアールの戦死。正午、休戦協定。
　深夜、ローマの軍事会議。マッツィーニは徹底抗戦、ガリバルディは撤退、議会は降伏を主張。マッツィーニ、辞職。
　7/2、アメリカ政府、ガリバルディに亡命受け入れを表明。ガリバルディ、ローマ外で戦う用意がある為にこれを辞退。
　午後五時、サン・ピエトロ広場にて義勇兵の解散。ただし、ついて来たい者はついて来い。午後七時、4700の義勇兵、チボリに進軍。
　7/3、フランス軍、ローマ入城。

第五章　悲劇の敗走

　フランス軍、7000の兵でガリバルディを追跡。
　7/3、ガリバルディ、チボリ到着。
　7/4、モンテロトンド到着。赤い悪魔の評判、ローマ共和国発行の銀行券は効力なし。夜の行軍、教会を敵に回したガリバルディは、食糧の調達さえ困難。
　7/11、トーディ通過。オーストリア軍、シチリア軍、フランス軍が合流してガリバルディ捕獲に動くとの報せ。
　7/17、トスカナ領チェトナ到着、好意的な雰囲気。始めて、屋根の下で眠る。義勇兵2500。
　7/30、アペニンを越えてサン・マリノ共和国国境に到着。兵1800。最後尾はオーストリア軍掃討部隊に捕獲。
　7/31、夜半、解散。なおも残る兵200、身重のアニータを連れて、山道を夜間行軍。8/1、漁村に到着。8/2、ヴェネツィアに出航。高熱に苦しむアニータ。海上でオーストリア海軍により、十三隻のうち十隻が舵捕。海岸に着いたのは30人。さらに分散するも、ここで別れた者は、後にオーストリア軍に捕まり、銃殺。
　ガリバルディ、アニータ、レッジェーロ、三人の逃避行。とうもろこし畑の中、農具置き場などを点々と逃げる。
　8/4、アニータ、昏睡状態。医者を探すも、手遅れ。
　ガリバルディ、泣きながらの逃亡。ラヴェンナ北方の松林で潜伏。
　ロマーニャの地下組織、司祭ドン・ジョヴァンニの助けで、逃走。トスカナ領サンタ・ルチアの居酒屋で休息。オーストリア軍巡視隊クロアチア部隊に取り囲まれるが、しらを切って通す。
　チェルバイア村、技師エンリコ・セークイ、二人をローマ共和国の敗残兵と見抜く。エンリコ「ローマはまだ戦っているのか」　ガリバルディ「すべて終わった、戦士達は去った」　エ「われらのガリバルディはどこにいるのか」　ガ「友よ、ガリバルディは君の腕の中にいる」
　8/、漁村カーラ・マルティナ、海路でポルトヴェーネレ、9/7、キアーヴァリ到着。

第六章　二度目の亡命

　1849.9/6。ピエモンテ政府、ガリバルディを逮捕。政府の許可なくローマで戦った罪。
　ジェノヴァに移送、温情でニースに寄港、家族に会う。チュニジア亡命、総督、フランス政府の圧迫を恐れて上陸拒否。カーリアリ、マダレーナ島、ジブラルタルを漂泊。
　11/14、モロッコのタンジールに滞在。
　1850.6/、ガリバルディ、渡米。
　7/、ニューヨーク着。船員として働く希望も、市民権の取得不可で断念。資産家アントニオ・メウッチの援助で、ソーセージ工場を設立するも失敗。ついで、ローソク工場を成立して成功。
　1851.4/、旧友フランチェスコ・カルパネットの誘い、再び海へ。400tのペルー籍船に船長として乗務。
　1852.1/10、リマ初、海鳥糞を積んで広東へ。
　3/19、母の葬儀を夢に見る。これは正夢で、同日、生母ドンナ・ローザ死亡。葬儀は盛大で、アレクサンドル・ゲルツェンも出席。
　帰りは絹、手工芸品を積んで帰る。奴隷貿易の盛んな当時だが、ガリバルディがそれに手を染めたという容疑は、トリノ大フィリップ・Ｋ・コーウィの手により、ペルーの公文書を調べた上で否定されている。
　船主との不和、退職。
　1854.1/16、ニューヨーク出航。
　2/11、ロンドン着。マッツィーニ、ゲルツェンらと会う。ゲルツェンによる印象、トロイ陥落後、各地を放浪した後にローマの礎を築いたアエネーアスのよう。
　マッツィーニの蜂起主義、1852.1/、マントヴァのベルフィオーレ事件、1853. 2/、ミラノ職人蜂起に関与。ふたつの蜂起はともに失敗、いたずらに犠牲を出すものとして非難される。
　対するガリバルディ、サルディニア政府に期待する事は難しいが、それが最良の道であると信ずる。
　1852.11/、貴族カミロ・ベンソ・デ・カヴール、サルディニア王国の首相となる。ヴィットリオ・エマヌエレ二世を補佐、自由主義政策を進める。自由関税、金融政策、鉄道整備、教育普及、軍隊改革。
　ガリバルディ、ニューカッスルに滞在。熱狂的な歓迎、下院議員ヨゼフ・コーウェンが寄付を募り、刀と望遠鏡を贈る。
　1854.5/3、ジェノヴァ上陸、歓迎。

第七章　ピエモンテへの接近

　旧マッツィーニ派のジャコモ・メディチ、エンリコ・コセンツ、アゴスティノ・ベルターニと接触。彼らは1853ミラノ蜂起後、マッツィーニと袂を分かったもの。

　サルディニア王国、クリミア戦争に参加。英仏に伍して、オーストリアと戦う。これは英仏に恩を売るカヴールの戦略。マッツィーニは益なしと反対。ガリバルディはカヴール寄り。
　1855.4/、サルディニア王国、兵17000をクリミアに派兵。
　1855-56、ガリバルディ、政局から遠ざかり、地中海航路を就航、家族と暮らす日々。
　1855.12/、ガリバルディ、カプレラ島の半分を購入。かねて念願の島暮らし。ナポリの政治犯釈放運動、サルディニア寄り発言と、活動は散発的。
　1857.6/25、マッツィーニ配下のピサカーネ、ジェノヴァ蜂起をもくろんでサープリに上陸。しかし、農民の反乱も援軍もなく、ブルボン軍に包囲、殲滅。ピサカーネは殉教者となるが、マッツィーニはその無謀さを非難される。
　1858.7/21、仏領プロンビエールの湯治場にて、カヴール－ナポレオン三世の会談。フランスをサルディニア側に引き寄せる為の密約。一、フランスはサルディニアとともにオーストリアと戦う。二、その代わりにサヴォイ、ニースを割譲。三、従弟ジェローム・ボナパルトをトスカナ国王、将軍ミュラーをナポリ国王とする。四、ジェローム・ボナパルトと皇女クロチルドとの結婚。
　ニース割譲に難色を示しながらも、それを受け入れるカヴール。
　12/20、カヴール、ガリバルディを招聘。あくまで密約は隠しながら、義勇兵の組織を依頼。
　1859.1/1、ナポレオン三世、オーストリア大使に対し、両国間の関係遺憾を表明。
　1/10、ヴィットリオ・エマヌエレ二世、トリノ議会で、イタリア国民の悲痛な叫びに耳を塞いでいられないと発言。
　1/、末、ジェロームとクロチルデの結婚。
　2/、末、ガリバルディ、ヴィットリオ・ーエマヌエレ二世に謁見。純粋で、心根の優しい、武人肌の39才の国王に心酔するガリバルディ。国王も深い親愛の情を示す。冷徹な戦略家のカヴールと、愛国者ガリバルディとは、別世界の住人。
　3/17、ガリバルディ、アルプス狙撃隊を組織。三隊に分かれ、それぞれをメディチ、コセンツ、ニーノ・ビクシオが率いる。

第八章　戦い、そして恋

　諸国の反応。イギリス、サルディニアとオーストリア双方に和解案を提唱。ロシア、プロイセン、サルディニア・フランス同盟に反発。
　ナポレオン三世、イギリスの提案を受諾。カヴールもしぶしぶ同意。ところが、図に乗ったオーストリア皇帝フランツ・ヨゼフ、サルディニアの即時武装解除を要求。カヴール、これを拒絶。オーストリアの攻撃、プロンビエールの密約どおり、この攻撃に対する防衛という形でフランスの参戦。
　1859.4/29、第二次イタリア独立戦争。
　ラデツキーの後継者ジュライ将軍、十七万の兵を率いてトリノ侵攻。ナポレオン三世指揮下のフランス軍十二万、サヴォナ、ジェノヴァに上陸。国境守備のイタリア兵は六万。伊仏の合流は5/14、それまでは苦しい情況。
　5/5、ガリバルディ、トリノ防衛の為のカサーレ行き。配下は3500、ビクシオ、コセンツ、メディチ、カイローリを将とし、労働者、馬丁、床屋、肉屋、下男、鍛冶屋、左官屋などからなる義勇兵部隊。
　5/10、オーストリア軍、不意の退却。ガリバルディ、その右翼攻撃の為の迂回。オーストリア軍が守るロンバルディア地方を通ってマジョーレ湖畔へ行くと見せかけて、同じく守りの固いティチーノ川を渡る。敵も味方も欺くゲリラ行軍。
　5/23、ガリバルディ、ヴァレーゼ入城。愛国心の強い町、市民と兵士が熱狂して抱擁。
　ヴァレーゼ守備戦、至近距離まで敵を引き付けて一斉射撃、そして白兵戦。
　コモへの追撃戦。道中の住民の熱狂、叫び、涙、抱擁。
　5/20、ジュライ将軍指揮下のオーストリア主力部隊、ヴォゲーラ近郊モンテベッラにて、同盟軍に敗北。
　6/4、オーストリア軍、マジェンダでも敗北。
　6/8、ナポレオン三世、ヴィットリオ・エマヌエレ二世、手を携えてミラノ入城。
　ガリバルディ、ベルガモ、ブレーシアを進軍。民衆の歓迎、手や服に接吻、新生児に洗礼、肖像画に対する信仰。
　6/9、ガリバルディ、ミラノ入り、正規軍と合流。国王は優しいが、他の将軍の妬み。行動の自由を奪われる。
　7/15、ガリバルディ、ロナートのオーストリア軍総司令部攻撃を命じられる。フランツ・ヨゼフのいる本陣。猛烈な反撃、多くの犠牲者を出す。
　6/24、ソルフェリーノの激戦。十一時間に及ぶ戦闘、仏、12000、サル、5500、墺、22000の犠牲。看護に当たったアンリ・デュナン、赤十字を組織する。ガリバルディは不在。
　7/11、ナポレオン三世、フランツ・ヨゼフ、ヴィラフランカ近郊の農家にて講和予備交渉。まずオーストリア、ロンバルディア地方をフランスに割譲、しかる後にフランスがサルディニアにこれを贈与。ヴェネト地方は元のまま。
　ヴィットリオ・エマヌエレ二世、これを了承。不服とするカヴール、首相辞任。
　出し抜けの講和、義勇兵にとっての衝撃。銃を捨て、泣き出すヴェネト地方出身者。現実派のガリバルディ、これも良しとする。
　7/23、ガリバルディ、アルプス狙撃隊を解散。「ナポレオンとフランス国民に対する感謝を忘れてはならない」
　ガリバルディとアルプス狙撃隊のニュース、世界を巡る。チャールズ・パーヤ著ガリバルディ伝、五万部を売る。米、ガリバルディ回想録を出版。仏、小説家ルイーズ・ゲーチ、かなり脚色の強いガリバルディ伝を出版。
　ガリバルディ、ロヴェーレに駐留。単独で要請のある所に出向く覚悟。ロマーニャ地方は教権から離脱、トスカナ、パルマ、モデナは、国王が逃げ出した後、革命臨時政府が樹立。
　カヴールの友人ルイージ・ファリーニ、ロマーニャ、パルマ、モデナの執政官となり、ベッティーノ・リカーソリはトスカナの執政官となり、これらをサルディニア王国に組み入れる事を検討。
　7/、ファリーニ、リカーソリ、ガリバルディをトスカナ軍司令官として招聘。ところが、行ってみると、副司令官の地位。
　9/20、ラヴェンナ、十年ぶりに妻アニータの墓参り。
　ガリバルディ、百万梃の銃、百万人の兵士、募集。
　ファンティ司令官とガリバルディとの軋轢、配下メディチの処遇を巡って決定的。
　ヴィットリオ・エマヌエレ二世、ガリバルディを解任。
　ガリバルディの恋。相手はレイモンディ侯爵家の十七才の娘ジュゼッピーナ。もともと乗り気のない娘、父の強い勧めで結婚を承諾。
　1860.1/24、結婚。しかし、娘は青年将校と交際があり、妊娠している事が発覚。一時間で破談。
　ガリバルディの女性関係。ロンドン滞在中、未亡人エンマ・ロベルトと結婚を前提とする交際。息子の反対。
　ドイツ人作家エリプス・メレーナ、カプレラ島を訪問。交際。
　家政婦バッティスティナ、女児アニータを設けるが愛情が不足。

第九章　千人隊の偉業

　1860はリソルジメント運動奇跡の年。
　ガリバルディ、カプレラ島にて農耕、漁に没頭。
　3/、中部イタリアのサルディニア併合を巡る住民投票。パルマ、モデナ、ロマーニャは、賛成426006、反対1506。トスカナは賛成366571、反対14925。併合。
　3/24、プロンビエールの密約、公表。ニース、サヴォイアの割譲。ガリバルディの怒り、演説。しかし、ニースの住民投票は、賛成25943、反対260。
　シチリア人フランチェスコ・クリスピの訪問。

　シチリアの歴史。
　1859.6/26、パレルモ民衆蜂起。
　11/27、警察長官暗殺未遂。
　1860.3/2、マッツィーニの檄「シチリア人へ」
　シチリア人の反ナポリ、反ブルボンの運動は、サルディニアへの統一運動に合流する。
　4/4、パレルモ職人階級マエストランツァ、ガンチア修道院での蜂起。失敗。クリスピ、ガリバルディの協力要請を決意。
　ガリバルディ、シチリア遠征を準備。ミラノ知事マッシモ・ダゼーリオは百万梃の銃募金で集めた二百梃の銃の引き渡しを渋る。その分、義勇兵は増える。
　義勇兵は千人、米コルト大佐から百梃のピストル贈与。さらに、国民協会から千梃のマスケット銃。ただし、十に九は使えず、銃剣を付けて使用。オルランド兄弟、バイロン夫人、ウェリントン公爵から寄付金。
　4/27、パレルモ蜂起失敗の電報。
　4/29、パレルモの都市の蜂起は失敗したが、農村部の蜂起は継続。農民武装組織スクアドラの抵抗。
　5/5、ロンパルディア号、ピエモンテ号、1150の義勇兵を載せてジェノヴァを出港。
　5/6、ザムビアンキ率いる60名をウンブリア侵入の別動隊任務に。
　5/11、総勢1089名、シチリア西端マルサーラに到着。敵ブルボン軍は25000。
　シチリア出身のロザリーノ・ピーロ、ジョヴァンニ・コルラーオ、先遣隊としてシチリア入り。スクアードラを組織。
　5/12、シチリア出身のラ・マーサ、パレルモまでの道中で民衆を蜂起させる事を提案。その任務に着く。
　5/12、武装山岳人ピッチョッティを含むスクアードラと千人隊の合流。
　5/15、サレミ北方カタラフィーミ、1200の兵、三倍のブルボン兵に勝利。
　ガリバルディ、道中にて、製粉税ほか、ナポリ政府が発した税をすべて廃止。
　5/26、千人隊、4500に膨らむ。
　二万の兵が守るパレルモ攻略は不可能。そこで、攻撃目標がモンレアーレであると見せかける作戦。
　モンレアーレ駐留軍、本隊より増援を得る。
　5/27、早朝、千人隊、パレルモ突撃。すべての道、すべての路地で、ブルボン兵との血みどろの戦い。女子供までが参戦、教会の鐘は乱打、八時間の攻防。
　パレルモ陥落、入城。しかし、弾薬は底を尽きる。
　5/29、ブルボン軍、停戦協定。
　5/30、派遣軍3000、ブルボン本隊に合流。
　シチリア全土での民衆蜂起。ブルボン軍、ナポリ王の裁可を得て戦線放棄。
　6/2、ガリバルディ、シチリア独裁官に就任。
　ヨーロッパ全土から義勇兵がシチリアに結集。ヴィクトル・ユゴー、驚異的冒険と賞賛。

　千人隊メンバーで、後に日本に来た二人。
　露レフ・イリイッチ・メーチニコフ、ミラッツォで負傷し、アレクサンドル・デュマ・ペールに助けられた。後、バクーニン派アナキストとなり、ジュネーヴ滞在。大山巌の招きで来日、露語教師となる。
　シチリア人ヴィンツェンツォ・ラグーザ、後に彫刻家となり来日、おたまと結婚。パレルモにあるガリバルディ像は彼の作。

　ガリバルディの目標はシチリアに停まらず、ナポリ、ローマ、ヴェネツィアを解放し、全イタリアを統一する事。それが諸外国を刺激しかねないので、カヴールの杞憂を招く。
　ガリバルディ、シチリア政府をクリスピに委託。ブルボン軍の最後の牙城メッシーナへと向かう。
　メディチ部隊、メッシーナでブルボン軍と交戦。
　7/18、ガリバルディ本隊、メディチ部隊と合流。
　7/20、炎熱の下、八時間の死闘の末、ブルボン軍の降伏、撤退。
　8/19-20、千人隊、レッジオに残るブルボン隊から大砲30門、銃500梃を奪う。
　9/5、ガリバルディ、サレルノ到着。ブルボン軍はカプアまで退却、ナポリ王フランチェスコ二世はガエータまで避難。
　9/7、ガリバルディ、ナポリ入城。守護神サン・ジェンナーロに表敬。
　ガリバルディ、両シチリア王国の独裁官に就任。義務教育、価格統制、失業手当。さらに、アレクサンドル・デュマを博物館館長、考古学発掘総監に任命。
　カヤッツォでブルボン軍の反撃、千人隊の敗退。ガリバルディ、カセルタ宮殿に司令本部を置く。ブルボン軍五万、千人隊二万。
　10/1、カプア要塞を巡る戦い。ゲリラ戦で砲台を奪い、野戦では大量投入という二面作戦。息子メノッティの活躍。午後、ブルボン軍退却、さらにサルディニア軍の援軍。
　10/2、ヴォルトゥルノ河畔での戦い。ガリバルディ側の犠牲、死者300、負傷1300。南部イタリアの完全解放、ただし、ガリバルディからサルディニアへの主権の移行。
　ローマ解放を目指すガリバルディ、フランス、オーストリアの介入を避ける為にそれを阻止するカヴール。
　10/21、シチリア、ナポリの住民投票。圧倒的多数で、サルディニア併合。
　10/26、テアーノ、ヴィットリオ・エマヌエレとガリバルディの会合。「ここにイタリア国王がおられるのだ、国王万歳」
　国王、ここからはサルディニア軍の単独行、ガリバルディは待機。これは、南部イタリア解放の栄誉を奪い、ガリバルディ軍を解体する事。
　11/3、千人隊のうち400名に勲章授与。千人隊のサルディニア軍への編入は、訓練不足を理由に断られる。
　11/8、ヴィットリオ・エマヌエレ、シチリア、ナポリの王位を戴冠。
　11/9、カセルタ宮にて、千人隊の解散式。ガリバルディ、全員と握手。

　サルディニア王国は、二十六年前に死刑判決を下した人物によって、南部イタリアを手にした。王国はガリバルディを将軍にしようとした。だが、ガリバルディはその地位も、ほかの報償も辞退し、何の不満も表明しなかった。そして、孤独感、挫折感を胸にナポリを去った。最後に残した言葉は、「ローマで会おう」

第十章　ローマか死か

　1861.2/、イタリア王国の誕生。人口2200万、うち900万はガリバルディの寄与するもの。
　4/18、ガリバルディ、ナポリ代表イタリア王国議員としてトリノ国会に出席。赤シャツ、ポンチョ姿。
　ガリバルディ、義勇兵を正規軍に含む事を要求。義勇兵、四万、正規軍、六万。予算的にも無理な相談。涙銭もなしに義勇兵を解散させるのは、義に背くより他のなにものでもない。ビクシオの妥協案、1500名の吸収。ビクシオ、メディチ、コセンツ、正規軍に入る。
　6/6、カヴール死去。
　カプレラ島、巡礼者の殺到。
　アメリカ北軍、司令官待遇でガリバルディ招聘。実現せず。
　混乱下のロシア、貧者の友が我々を救いにやって来るとガリバルディ待望。
　ローマ、ヴェネツィアの解放を願うガリバルディ。しかし、政府中枢にいるかつての部下は、それを妨げる。
　1862.6/、シチリア独立運動、鎮静化の為にガリバルディ赴任。ローマか死か、という檄を飛ばす。
　8/6、ガリバルディ、義勇兵3000を率いてパレルモ発。
　8/24、ガリバルディ軍、メッシーナ海峡を渡る。
　8/28、王国軍と義勇兵との衝突。パラヴィチーニ大佐軍、ガリバルディに対して発砲。右足踵に命中。
　逆境のガリバルディ、民衆の同情。ローマ問題に対するヨーロッパの関心。英ハイド・パーク、四万人の抗議デモ。
　1863、ポーランド蜂起。ガリバルディ、配下のフランチェスコ・ヌーロと義勇兵を派遣。
　1864.4/3、ガリバルディ、イギリス訪問。階級、党派を越えた歓迎。ゲルツェンの仲介でマッツィーニとの復縁。ガリバルディ「祖国の為、自由の為、もっともよく尽くした人間がここにいる。少年だった頃の私を導いた人物だ」
　9/、伊仏ローマ問題に関する九月協定。フランス駐留部隊は二年以内に撤退。ローマはイタリア軍が防衛。首都はトリノからフェレンツェへ移す。
　1865、フェレンツェ遷都、フランス軍撤退。
　ビスマルク、ビアリッツにてナポレオン三世と会談。対オーストリア包囲網。
　1866.2/、イタリア、プロイセンと通商条約。4/、対オーストリア軍事同盟。
　国王、ガリバルディを起用。ガリバルディ、ガルダ湖畔サロに司令部を置く。これは、ヴェネツィアからは遠く、一番乗りを避けさせる為。
　チロル戦線、長男メノッティ、次男リッチョッティの活躍。
　6/24、正規軍、クストーザで敗北。ガリバルディ、チロルより撤退してブレーシア防衛の命。これを無視してモンテ・スエーロの攻撃。
　7/3、モルトケ、ケーニヒグレーツの勝利。
　7/21、ガリバルディ、ベッツェツカで激戦の末勝利。これは最も激しく、イタリア唯一の勝利。
　7/22、プロイセン、オーストリア休戦条約。
　10/18、ヴェネト地方、フランスに割譲されて後、イタリアに移譲。
　10/20、住民投票、賛成647000、反対69で併合。ただし、トレンティーノ地方は、遅れて1918に併合。
　ガリバルディ、フランチェスカ・アルモジーニとの交際。1867.2/、女児クレーリア出産。
　同時期、ガリバルディ、ローマ解放の為の十字軍を組織する運動。教皇庁を「毒ヘビの温床」と激しく非難。
　2/、ヴェネツィア訪問、ロンドンを上回る歓迎。
　7/、ローマを欠いてイタリアはあり得ない、と公言。
　9/、ガリバルディ、ジュネーヴ国際平和会議に出席。他の出席者、バクーニン、ゲルツェン、ドストエフスキー、キネ。注目の的はガリバルディ、名誉議長に推される。その演説「奴隷のみが僣主に対する戦争を行う権利を有し、その場合のみ戦争は許される」　奴隷はローマ市民、僣主は教皇。
　9/24、ガリバルディ、強制送還。政府に対して、イタリア中の非難。
　10/19、ガリバルディ、フェレンツェに出現。メノッティ、教皇軍と小規模の衝突。
　フランス、ローマ派兵を準備。イタリア、ガリバルディを放置。ここに、政府首脳のローマ問題への不満が表れている。
　10/24、ガリバルディ、モンテロトンドにてメノッティと合流。教皇軍を撃破。　11/3、メンターナにて教皇軍の反撃、さらにフランス軍の合流。ガリバルディ敗走、イタリア王国軍によって逮捕。ヴィクトル・ユゴー、ローマ解放を願う赤シャツ隊長を阻止した国民である事を恥じると詩作。
　12/26、ガリバルディ、釈放。

第十一章、インターナショナルは未来の太陽である

　カプレラ島での三年の平穏な生活。小説を書くガリバルディ。
　第一作「クレーリア、あるいは僧侶の政府」　舞台はローマ、主人公クレーリアはトラステーヴェレの真珠と謳われる程の美人。彼女が好色漢の枢機卿プロコピオの毒牙にかかろうという時、ひとりの若者が現れ、枢機卿を殺して彼女を救う。二人は官憲の眼を逃れる為、勇敢で経験豊富な「隠者」と呼ばれる者の支配する島へ向かう。彼らはローマ解放を誓い、さらにイギリスへ旅立つ。
　枢機卿のモデルはピウス九世の片腕で、自由主義者弾圧で悪名高いアントネルリ、隠者はガリバルディ自身と、簡単に読める。少しは好評。
　第二作「カントーニ、義勇兵」　ガリバルディとアニータをモデルとする作品。不評。

　10/、ガリバルディ、マルセイユ上陸。
　ミシュレ談「私はヨーロッパに一人の英雄を見る。その生涯のすべてが伝説である。たとえ、彼がフランスに反感を抱く多くの理由があったにせよ、たとえ彼からニースを奪ったとしても、たとえアスプロモンテで、メンターナで彼に銃を向けたとしても、この人はフランスの為に自らを犠牲にしようと望んだのである。何と謙譲である事か」
　パリ、ガンベッタ、ガリバルディ会談。両者とも共感。ガリバルディ、国際義勇兵部隊を組織、その数、5000から19500に急増。
　12/、リッチョッティ部隊、プロイセンの通信網を断つ。
　1871.1/21、ディジョンでの戦い。ガリバルディ軍、勇猛なプロイセン正規軍を斥ける。それはまた、普仏戦争での唯一の勝利。
　1/28、パリ降伏、休戦協定。ただし、ディジョン地方が協定から除かれたのは、ガリバルディに対するビスマルクの意赴返し。プロイセンだってイタリアを助けたのに、という気持ちがある。
　2/8、国民議会選挙、ディジョン、パリ、ニース、サヴォイ、アルジェは、ガリバルディを議員に選出。ルイ・ブラン、ユゴー、ガンベッタに次ぐ上位。
　2/12、ガリバルディ、帰国決意、議員辞職。その後に発言しようとするガリバルディに対して、発言権はないとする保守派議員。ユゴーの抗議、「ガリバルディは普仏戦争で敗北を見なかった唯一のフランス将校である」
　3/18、パリ、民衆蜂起。パリ・コミューン。中央委員会、ガリバルディを司令官として招聘。ガリバルディ、健康上の理由で辞退。ただし、リッチョッティを残す。「お前はフランスに停まり、コミューンの動きを観察せよ。そこで戦闘があれば、それに参加するが良い。お前がコミューン側に立てば、私はそれに合流する。しかし、フランスの内輪争いに巻き込まれてはならない」
　コミューンに参加した赤シャツ隊員は85名。
　コミューンを巡る、ガリバルディとマッツィーニの論争。

第十二章　現代のガリバルディ神話

　現代ではチェ・ゲバラと類似。過去に置いては、初期ローマ共和国のキンキンナトゥスに似ている。前458、アエクイ人、ローマに侵略。キンキンナトゥス、独裁官となり十六日で斥けるが、終戦後は地位を求めず農耕に帰った。
　1930年代、孫エツィオ、ムッソリーニに接近。
　1923.1/、孫リッツョッティ、サンテ、ガリバルディ前衛連合を設立。ファシズムと対峙。自由イタリアへと拡大。
　リッツョッティ、ファシズムに転向。サンテ、与せず収容所暮らし。
　1935.7/、伊共産党ディミトロフ、政府のエチオピア侵攻を非難。「ガリバルディの人民は、他の人民を虐げる事はしない」
　1936、スペイン内乱。パッチャルディ率いるイタリア人義勇兵、ガリバルディ大隊を名乗る。全員が赤シャツ、その合言葉、「今日スペインで、明日はイタリアで」
　1943.9/、ナチス・ドイツに対するレジスタンス運動盛ん。主力パルチザンもガリバルディ部隊を名乗り、首に赤いネッカチーフを巻く。

　現代イタリア人は、古代ローマやルネサンスではなく、リソルジメントの中にアイデンティティを求める。

参考
　歴史の中の英雄たち　史上の英雄を簡単に紹介、壮年期の写真あり。
　タビケン　辞書、貫禄ある老年時代の写真つき。
　手賀沼の畔より　ガロ著「イタリアか、死か」の紹介。
　イタリア・ドイツの統一　ガリバルディを筋金入りの自由主義者として紹介。
　ラテンアメリカの政治　ラテンアメリカの年表が凄い。ブラジル年表にて、ガリバルディの南米時代が垣間見える。
　有名人との邂逅ガリバルディ　銅像の写真つき紹介。
　ガリバルディ騎馬像　ジャニコロの丘にあるガリバルディ騎馬像。
　ガリバルディという名のスパゲッティ　トマトソースの赤い色が強烈だそうです。
　
　
　

寸評
　ガリバルディこそは、儒教精神の徒です。風貌、性格とも、子路を連想させます。
　坂本竜馬、勝海舟、西郷隆盛ら、近代日本の建国者に比べて、さらにスケールが大きく、聖人に近いものを感じさせます。フランス、オーストリア、カトリック教会と、身近に大きな敵があるが故。やはり、苦難が人を大きくするのでしょうか。

　壮年期の凛々しい肖像

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